世界中をぷらぷらしてきた

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リキシャのおっさんに乗せられてシティパレス方面へと向かう。シティパレスとはジャイプル旧市街の中心にあるヒンズー教とイスラム教の混合建築であり、要するに昔の宮殿なのだ。ジャイプル観光では風の宮殿と共に必ずと言っていいほど名前が挙がる観光名所にして、前述した通りに旧市街の真ん中に位置しているので宿も探せばあるだろうとの考えだ。

俺「ねぇ?ジャイプルはデリーに比べて綺麗な感じがするね」

おっさん「・・・・」

俺「アスファルトが多いからかなぁ。車も多いし、ショーウィンドウのある店も多いね」

お「・・・・・」

俺「ねぇ?」

お「・・・・・・」

俺「お前何黙ってんだよ?さっきまでベラベラしゃべってたじゃねぇか」

お「なぁジャパニ?さっきの話だけど本当にオススメの宿があるんだがどうだい?」

俺「宿はいいって。シティパレスに行けばいいの!」

お「分かったよ」

リキシャはどんどんと道を進む。正直乗って正解だと思うほどの距離を移動していた。20分程乗っただろうか。初めて見る街並みなのでどこがどこだか全然分からないし、何より観光客の姿が全然見えない。このおっさんは本当にシティパレスに向かっているんだろうか。俺は不安になってきた。

俺「おっさん?シティパレスまであとどれくらい?」

お「もう少しだよ」

俺「シティパレスに向かってるんだよね?」

お「・・・・・」

俺「お前絶対向かってないだろ・・・・」

案の定おっさんは全然関係ない宿へ俺を連れて来た。

俺「お前さ・・・マジで頭にくるんだけど。ここどこだよ?」

お「何度も言ったじゃないか。俺オススメの宿だよ」

俺「お前よ!?マジで聞いてんのか!?俺はシティパレスに連れて行けって言ったよな?お前分かったって言ってたろうが!?」

お「この後に行くさ!まずは荷物を置いてチェックインしろよ」

俺「あああ!?なんで俺がこの宿に泊まる事になってんだよ!」

お「オススメだって言ってるだろうが!」

俺「ふざけんなよ!俺は自分で好き勝手やるんだよ!最初に断っただろうが!」

お「お前がここに泊まらないなら俺にこの宿から金が落ちないから、シティパレスに行くなら倍の100ルピーはもらうぞ」

ブチッ

俺「ああああん!?!?!?もう1回言ってみろクソ野郎!俺は最初に駅からシティパレスまでで50ルピーって契約したんだぞ!それをお前が勝手に宿に連れてきて、しかも泊まらないなら倍払えだ!?あああ!?お前俺と喧嘩したいのか!?インド人は皆こうなのか!?皆クソ野郎なのか!?答えろ!今スグ答えろ!」

お「そ・・・そんな怒るなよ・・・」

俺「怒るだろ馬鹿野郎!俺の貴重な時間を無駄にしやがって!」

お「分かったよ。シティパレスに行くよ。だから100ルピーな

お「お・・・お・・・お・・・」

俺「おい。もういい。俺は歩く。お前は約束した場所まで連れてこなかった。でも駅から随分こいだから10ルピーだけ払ってやる。ほれ。じゃあな」

お「おい!!ちゃんと金払えよ!」

俺「うるせぇ!!どっか行けクソ野郎!」

お「払えよ!ちゃんとここまで連れてきただろう!」

俺「誰がここに連れて来いって言ったんだよ!俺はシティパレスに連れて行けって言ったんだよ!」

お「だからこれから連れてくって言ってるだろう」

俺「いーや、俺はもうお前と関わりたくない。消えろ。これ以上怒らせるな」

お「消えるから金払えよ!100ルピー払え!」

俺「こ・・・クッ・・・・ほんと・・・この・・・」

お「払え!!!乗ったんだから払え!!」

これ以上このアホの相手をしても疲れるだけだ。俺はバックパックを担ぎあげ、おっさんを無視して歩き出した。おっさんは諦めずにリキシャを手で押して追いかけてくる。「50ルピーでいいから払え」「40でもいい」などと騒ぎ立てているが俺は完全にキレていた。目も合わせずに無視をして歩いた。20分程おっさんに付きまとわれたが最後には英語ではなくヒンディー語で何やら騒ぎ、去っていった。


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さすがに騒ぎ疲れたので道端に座りペットボトルで水分補給。道路工事に勤しむおっさんにシティパレスの行き方を聞くと現在地から10分程歩けばいいらしい。休んだ後俺はおっさんに教えられた通りにシティパレスへ向かった。アジメール門という門をくぐり中に入ると観光バスが沢山停まっている。ここがシティパレスで間違いなさそうだ。

入り口を探してウロウロしているとリキシャのおっさんが寄ってきた。

お「おーい、お前何人だ?」

俺「ん?ジャパニーズだよ」

お「おお、ジャパニか。何してるんだ?」

俺「シティパレス見ようと思ったんだけどさ、これ入り口どこなの?」

お「お前中に入るのか。やめとけやめとけ、別に何も珍しいもんなんかないぞ」

俺「え!?そうなの?」

お「ああ。外国人なら入場料金も高いしな」

俺「え~。でもジャイプルを代表する観光名所でしょ?」

お「おい?このジャパニ中に入ろうとしてるんだけどやめたほうがいいよな?」

お2「やめとけ!何もないぞ。お前今日来たのか?」

俺「うん」

お2「その格好だと宿にもまだ行ってないんだろ?」

俺「うん」

お2「よし、じゃあ俺が乗せてってやるよ。さぁ、乗れ」

お「おい!俺が最初に声かけたんだぞ!」

お2「ほら、早く乗れ」

お「待てよ!俺の客だぞ!」

俺「あの・・・残念ですがどちらにも乗りませんので。この変に宿ないの?」

お2「この辺りに宿はないよ。安宿は駅付近に固まってるんだ」

俺「駅!?」

お2「ああ。駅まで乗せて行こうか?」

俺「俺・・駅から来たんですけど・・・」

お2「だって無いものは仕方ないもんな?」

お「ああ。あれ?でもこの先に1件だけ無かったか?」

お2「そんなのあったか?」

俺「あるの!?あるならそこでいいよ!」

お2「でもこの先の道はリキシャじゃ行けないんだよ」

俺「好都合じゃねぇかよ。どうやって行くの?」

お2「うーん。じゃあ10ルピーくれよ。教えてやるから」

俺「金取るのかよ・・・まぁいいよ10ルピー位」

お「おお俺にもくれよ!」

俺「ほれ」

お「へへ、さんきゅ。そこの角を左に曲がって、次を右、そんで次をまた左で、次を右に曲がると左に見えてくるぜ」

教えられた通りに進むとあっけなく宿を見つけることが出来た。しかし宿の門は閉じている。営業している雰囲気はないが思い切ってノックしてみた。すると中から女性が出てきた。

俺「あの、ここ宿ですか?」

女「お客さん?さぁ、入って」

俺「あ・・え・・部屋とか見たいし料金は・・?」

女「ここのところお客さんなんか全然こないから今あなた1人よ!好きな部屋を使っていいわ」

俺「どんだけ人気ねぇんだ・・・え~・・・。料金は?」

女「300ルピーでどの部屋でもいいわよ」

俺「うーん。なんか今日は疲れたし、見るにしても見ないにしてもシティパレスに行くならここから近いしなぁ。どうしよう・・・。うん、じゃあとりあえず1泊だけ!」

女「分かったわ。じゃあ二階の好きな部屋を使ってね。あと荷物置いたらお金渡すから野菜買ってきてちょうだい」

俺「え?」

女「今晩カレーにする材料よ!」

俺「俺が?」

女「そうよ」

俺「なんで?俺客だで・・・?」

女「いいから、ほらほら」

俺「え?」

買い物スタート。
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日本を出て1ヶ月以上、気が付くと暦は12月になっていた。

ジャイプルへ向かうためにデリー駅で始発を待つ。外はまだ真っ暗なのに駅はかなりの賑わいを見せていた。赤いジャケットを羽織り荷物を運ぶポーターの姿もそこかしこに見られ、ガヤガヤとしていた。今日俺が乗る列車はシャターブディーエクスプレス。言わば急行列車である。全席エアコン完備、食事も出てくる言わばグレードの高い車輌だ。料金は片道約300ルピーと2等列車の料金に比べると10倍以上高いが、さすがに2等列車に乗るのも嫌になってきたので今回ばかりは大名移動である。


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駅のホームで寒さに震えながらチャイを購入しすすっているとアナウンスが流れ、それまでホームでごった返していた人がどんどん階段を上って移動していく。もしやこれは出発ホーム変更の報せなのか?俺は乗客の後について階段を駆け上がった。だが階段を上ったところで右のホームへ行く人もいれば左のホームへ行く人もいる。今まで同じホームで並んでいただけに俺は不安になった。

俺「あの、ジャイプルに行きたいんだけど」

女「ジャイプルの列車はホームが移動になったわ、そこのホームから出るから行ってるといいわよ」

親切な女性に教えられホームへ向かう。階段を下りるとまだそこに列車の姿はなく、先程まで目の前にあった列車が風を防ぐ役割をしてくれていたのに今度は凄い寒さだ。俺はバックパックの中から愛用の毛布を取り出し、包まりながらベンチに腰掛けた。ボーっと線路の先に目をやると日本では見ることの出来ないようなサイズのネズミがチョロチョロと走り回っている。そしてその横をゴミを拾いながら歩くインド人がおり、またすぐその横を列車が走り抜ける。

1週間程前リサに送ったメールも大学生佐々木に送ったメールも、どちらからも返信はない。実はチケットを取ってからの1週間、俺は凹むに凹みまくっていた。当初ドミトリーに日本人は俺だけのはずだったが、徐々に人数が増え、最終日には俺を含め7人の日本人がドミトリーに泊まっていた。皆と一緒に飯を食いに行くこともあったし、行くと会話中に旅先での思い出など色々語り合った。その中で1人の女の子から質問された。

女「ぷらさんって色々旅してきて旅中で恋とかしなかったんですか?」

俺「え?」

女「私色んな人のブログとか見るの好きなんですけど、結構夫婦で旅してる人とか多いじゃないですか?あれって最初は個人で旅してたけど、旅先で出会ってお互い好きになっちゃって、日本戻ってから付き合って・・・で、結婚してからも旅が忘れられなくて来ちゃったとか、そんなパターン多いんですよ」

俺「へ・・・へぇ~」

女「それで、もしかしたらぷらさん出会いとかあったのかな~って!」

俺「ま・・・まぁあるよ。それなりにね」

一同「へぇ~。聞かせてくださいよ」

俺「べ・・・別にいいじゃない。いいの!俺の話はいいの!」

女「いいじゃないですか~!凄い興味ありますよ~!」

俺「いいのっ!!!俺も良く分からないんだからいいのっ!!」

結局その食事中は適当に話をごまかし、宿に戻ったが宿に戻っても質問攻めは続いていた。仕方なく俺は洗いざらい吐き出した。あの忌わしき震災前後からリサとは連絡が取れなくなっていた。いや、正確には俺が取らなかったのだった。リサを追いかけて韓国へ行ってから結構な時間が過ぎた。帰国してからも、しばらくはスカイプであったりメールであったりコンタクトをとっていたが、そのうちUさんから薦められたフェイスブックとやらを初めてみたのだった。そのフェイスブックの中でリサのUPしている写真を見たとき、オーストラリアに戻ったリサの生活と、今俺がおかれている立場の生活とではあまりに温度差があることに勝手に気付き、だんだんフェイスブックを開かなくなっていった。

仕事をして終われば家に戻りコンビニでビールと惣菜を買ってPCの前で黙々食べる俺の生活と、欧米さんと毎晩パーティーのように盛り上がっている写真を見ると、うまく言えないけど胸が痛かった。震災前後、ふと思い出したようにフェイスブックを開いた時があった。リサとUさんしか友人登録していなかった俺には2人から沢山のメールが届いていた。そして2人の近況も書かれてあった。リサの写真には親しげに男性と2人で写っている写真が沢山あった。俺はメールを読まなくてもなんとなく内容が分かった気がしてメールを全部消した。Uさんのメールも巻き添えに全部消した。Uさんごめん。

そんな事をボーっと考えているとホームへ列車がやってきた。10分程遅れたようだ。


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一緒に乗り込んだ欧米さんバックパッカーと共に列車に乗り込みむ。せっかくのエアコン付き車輌なのに12月早朝のインドではエアコンは必要ない。汚れて外が見えないガラスの窓に顔を近づけ外を見えいると列車ユックリと動き出した。朝早い時間だったこともあり、乗客はほとんと目を瞑って眠っている。俺はすっかり冷え切ったチャイをすすりながら、真っ暗な窓の外を眺め、思い出にふけった。フェイスブックを見たときはとにかくショックだった。とにかく落ち込んだ。しかし落ち込む暇を与えないように震災がやってきた。あとはボランティアの日々だったが、ボランティアをしている間は何も考えないで良かったのでとにかく黙々と作業に打ち込めた。ある意味俺はボランティアに救われたんだと思う。そして石巻でおっさんと出会い、こうしてまた旅に来ている。携帯電話のカメラ画像を開くとヘルメットを被った俺とおっさんのツーショット写真がある。インドに来てまでおっさんの顔を見るとは思いもしなかったが、開いてみた。おっさんは今もどこかで仕事を頑張っているんだろうなぁ。それに比べて俺は何を旅先でまでメソメソと・・・。そう思うと少しは気分が晴れた。

列車は4時間経ってもジャイプルに到着しなかった。外はすっかり陽も昇って気温も上がってきた。窓の外は小さな村が時折顔を見せるが、いたって田舎の風景だ。急行列車とは言うけれども最高時速は実に90km。今朝は霧が濃かったのでしばらく徐行運転をしていた。それで遅れているのだろう。この列車に乗る前に宿でジャイプルの情報は得ていた。有名な見所は「風の宮殿」「シティパレス」「アンベール城」「水の宮殿」「銀細工」とこんなもんだ。滞在日数はまだ全然未定だが、ガイドブックを見せてもらった感じでは「風の宮殿」はなかなかに見事な作りだった。


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結局列車は4時間半程かかってジャイプル駅へ到着した。ジャイプルはデリーと違って少しだけ綺麗な印象だった。今思えばここを綺麗と思ってしまうほど、俺の心はインドに毒されていたのだった。

駅の改札を抜け外へ出ると大勢のリキシャワラーが獲物を狙っている。この風景は北インドならどこでも同じようだ。とりあえず宿を探して荷物を置いておきたかった俺だが、リキシャのおっさんに宿を訪ねたら最後。こいつらは宿の快適さや値段など二の次三の次で自分への報酬狙いで契約している宿へ連れて行ってしまう。仮に「○○に行って」と注文しても「OK」と爽やかに返し、連れて行く先は全然違う場所。しかも悪びれた素振りも見せず自分が正しいかのように説教までしてくるリキシャワラーもいる。今回ジャイプルで泊まりたい宿が決まっていなかった俺は、とりあえず歩き回って程度のいい宿を自分で見つける予定だったのでリキシャに乗る必要はない。

「ジャパ~ニ!?」

「ヘイ!どこいくんだ!?」

「ジャパニー!カモーン!」

「ウェアアーユーゴー?」

「マリファナ~ハシシ~」


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次々に俺に浴びせられる悪魔の呪文を無視し、いかにも欧米さんの仲間のふりをして歩く。しかし困ったことに欧米さん達は2台のオートリキシャに乗って移動してしまうようだ。勿論その場にポツンと残された俺。ハイエナのようにやってくる暑苦しいおっさん総勢10名。

「へへへへwwジャパニー?どこにいくんだー?」

俺「すぐそこだよ!歩くから乗らないよ」

「そんな事言うなよ。10ルピーで乗せてやるよ」

俺「5ルピーでも乗らないよ」

「なぁ?お前どこに行くんだ?シティパレスか?風の宮殿か?」

俺「後でね。今は宿を探してるんだよ」

「なーんだフレンド!早く言えよ!」

俺「お前みたいなフレンド未だかつていたことねぇよ」

「そう言うなってフレンド。お前だけに特別に最高の宿を紹介してやるよ」

俺「結構です。お断りしますセニョール」

「お前、損するぞ?ホットシャワーに朝食付き、フカフカのベッドで1泊800ルピーだ!安いだろ?」

俺「高くね?俺ドミトリーでいいし」

「お前日本人だよな?なんでそんな貧乏な所ばかり泊まるんだ?トラベル中なんだろ?もっとエンジョイしないと」

俺「あーもういいから、ほっといてくんね?」

「とりあえずお前宿に向かってるんだよな?安宿街はまだ随分先だぞ?」

俺「いいんだよ別に歩くから」

「歩けるわけないだろ~」

俺「あーうるせー。ねぇ、そこのおじさん?シティパレスまでどの位?」

お「5kmってとこかのぉ」

俺「ご・・・5km!?」

「ほら言ったじゃないか。ま、いいや。お前乗らないんだろ?」

俺「あの・・その・・・10ルピーでいいんですか?」

「冗談じゃない。5kmだぞ?!お前今聞いたろ?50ルピーは貰わないとな」

俺「5倍かよ!高いだろ!」

「なら歩けばいいさ。この炎天下の中5kmか~。さぞ辛いだろうなぁ~」

俺「40でどう?」

「50」

俺「40」

「50」

俺「45」

「ノー!50!」

俺「くそ・・・お前なかなか頑固だな・・・分かったよ」


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交渉に失敗した俺はリキシャのおっさんに乗せられ、シティパレスへ向かった。だがそこには宿も何もないのであった。
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ジャイプルへの列車チケットも無事に取得し、デリーで過ごした一週間は実に平和だった。俺はお決まりの宿で出発の暇で毎日ゴロゴロと過ごした。腹が減ったら宿主オススメのカレー屋へ出かけ、メインバザールの土産物屋などをひやかしつつ、気が向いたらラッシーを飲み、やることも無くなれば宿に備え付けのPCでジャイプルの情報を調べたりした。この宿にはちょっと思い出がある。ほぼ召使状態の従業員ワグニとの思い出だ。見た目は身長160cm程度、やせ細っており、左足が少し不自由で歩くときは引きずって歩くその姿が俺は今でも忘れられない。彼はいつの時間も小汚いバケツに水を入れ、雑巾を持って床を拭いていた。とにかくいつ見ても掃除をしているのだ。年齢は多分35歳程だろうか。彼は本当に少しだけ日本語が話せた。いや話せたというより日本語の単語を少し知っている程度だったのかもしれない。欧米人が多く泊まるこの宿で彼は自然に英語を覚え、英語は不自由なく話せた。

ある日、ベッドでゴロゴロしているとワグニがドミトリーへやってきた。

ワ「やぁぷらぷら、調子はどうだい?」

俺「調子いいよー。どしたの?掃除?」

ワ「いや違うんだ。ボスが呼んできてくれって言うからさ」

俺「俺を?なんだろ?」

ワ「分からない」

俺は彼を信じて受付のある1階まで降りた。だが受付には宿主の姿はなく、そこには誰も居なかった。

俺「ボスいねーじゃん?どこ?」

ワ「ふふふ。嘘ね」

俺「はい?」

ワ「今私1人で留守番してて暇なんだ。一緒にお話しようよ」

俺「おいおい・・・俺4階から降りてきたんだぞ・・・・勘弁してくれよ。戻るね」

再びドミトリーに戻り5分後、またワグニがやってきた。

ワ「ぷらぷら~ハロ~!ハワユ~?」

俺「さっきも答えたろ・・・グッドだよ。ワグニは?」

ワ「俺はいつでも元気さ。サンキュー」

俺「んで?今度はどうしたの?」

ワ「さっきは悪かったよ。ボスが呼んでるんだ。今度は本当だよ」

俺「はいはい」

ワ「本当なんだ。ボスが君を呼んでいるから来てくれ」

俺「なんだよ面倒くせーなー!」

若干イライラ気味で1階に降りるとそこには宿主が確かにいた。

俺「なに?呼んだ?」

宿「おー、わざわざ悪いな。お前日本人だよな?飯は食ったか?」

俺「いや、まだだけど」

宿「そいつはナイスタイミングだ。ちょっと頼まれごとをしてくれないか?美味い昼飯ご馳走するからさ」

俺「マジ?」

宿「ああ」

俺「何?何するの?」

宿「簡単さ。こいつを日本語に訳して、日本語でこの紙に大きくかいてくれないか?」

俺「・・・・?ウェルカムトゥー・・・ああ」

俺は渡された画用紙に「ようこそインドへ!私達は日本人が大好きです!」と書いた。

俺「これでOK?」

宿「有り難うよ!よし、美味しいカレーをご馳走しよう。ワグーニ!!!!」

ワ「はいボス」

宿「ちょっとカレー買って来い。2人分な」

俺「ワグニのは?」

宿「ないよ。こいつは下働きだからな」

俺「ええええ・・・・」


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ワグニが買ってきてくれたカレーは凄く美味しかった。マッシュルームと生クリームが入ったカレーは辛さの中にもまろやかな深みがあり、それをバターロッティーにつけて食べるととびきりの美味さだった。

俺「これマジで美味いね!どこの店なの?」

宿「現地の奴等の行きつけの店だからな」

俺「後で教えてよ」

宿「ああ」

俺「ワグニ?後で奢ってやるから行こうぜ」

宿「おい、あいつを甘やかさないでいい」

俺「なんで?可哀想じゃん」

宿「あいつとはこんな契約だからいいんだ。おいワグニ!食後のチャイ買って来い」

ワ「はい!ボス!」

宿主は数ルピーをワグニに渡すとワグニは不自由な足をひきずり、笑顔でチャイを買いに向かった。これが俺にはどうしても理解しがたかった。朝から晩まで床を拭き、どれだけ遠くに居ても宿主のちょっとこいの一声で飛んで行き、少しでも遅いと蹴飛ばされる。笑顔でチャイを買ってきてくれたワグニの笑顔と、恐らく1~2ルピーのお釣りを貰って何度も深々と頭を宿主に下げる彼の姿を見て俺は悲しくなった。この宿は夕方5時になると宿主は自分の家へと戻る。その後の店番は翌日宿主がやってくるまでワグニや他の従業員が行うのだ。だが実際他の従業員は特に何も仕事をせずTVを見て談笑するばかりで、何かあると昼間の宿主のようにワグニをこき使った。

同日夕方、いつものように宿主が家へ戻ったのを見計らい、俺はワグニを夕飯に誘った。しかし彼は頑なにそれを拒んだ。

俺「大丈夫だって!」

ワ「駄目だよ。ボスに怒られてしまう」

俺「お客である俺が言ってるんだから大丈夫だって!」

ワ「駄目だよ。駄目だよ」

俺「なんだよ。じゃあ外で話でもしよーぜ。チャイ奢ってやるよ」

ワ「それ位なら・・・」

俺はワグニと宿の外でベンチに座り、チャイを飲みクッキーをつまみながら話をした。

俺「ねぇ?ワグニって何歳なの?」

ワ「40歳さ」

俺「じゃあボスは?」

ワ「ボスは23歳さ」

俺「あいつそんな若いのか・・・。あいつ意地悪じゃない?」

ワ「なんでだい?ボスは凄くいい人だよ」

俺「どこが!?ワグニをこき使ってんじゃん。それにケチだし」

ワ「そんな事ないよ」

俺「うーん。うまく言えないけど、日本人の俺からすると相当変な印象なんだよ」

ワ「そうなのか?日本は変な国だなぁ」

俺「いやインドの方が変だよ」

ワ「そんな事ないさ」

宿「おいワグニ、お前何してるんだ?」

その時、どういうわけか宿主が突然店へ戻ってきた。

ワ「あ・・・あの・・・すいませんボス」

俺「いや俺が誘ったんだよ。ワグニは悪くないよ」


バキッ


宿主はワグニの右頬を殴った。太っていて大柄な宿主が身長160cm程のガリガリのワグニを殴ればワグニは吹っ飛ぶ。だが吹っ飛んでもなお、ワグニは何度も頭を下げて謝っていた。

俺「おい!俺が誘ったんだって言ってんだろ」

宿「こいつは俺との契約を守らなかった」

俺「ちょっと位いいだろう」

宿「駄目だ。甘やかすと癖になる。おいワグニ!分かったらさっさと床の雑巾がけをしろ!」

ワ「は、はいボス!」

ワグニは顔を真っ青にして宿の中へ戻って行った。結局この宿主は弁当箱を忘れたので戻ってきただけだった。再び宿主が姿を消してから俺はワグニの元へ謝りに行った。

俺「ワグニ本当にごめんね」

ワ「なんで謝るんだ?悪いのは俺さ」

俺「いや俺が連れ出さなかったら殴られなかっただろうし・・」

ワ「何言ってるんだ、そのおかげで美味いチャイが飲めたんじゃないか」

俺「お前・・・本当にいい奴だなぁ」

ワ「そうか?はははは」

俺はいたたまれない気持ちで一杯だった。どこの国を旅していても露骨な上下関係というのは少なからず目にしてきた。しかしどこの国でも下で働く人間は上の文句を陰で話していたり、我慢するのは今だけで、いずれお金を貯めてビッグになるんだなどと夢を話していた。しかしワグニは宿主の事を心から信用しており、一生彼の元で働きたいとまで語っていた。40歳の男性が20歳そこらの人間に奴隷のように使われている姿は、俺には理解できなかった。例えそれが文化で、当然の事であったのだとしても俺には理解できなかった。


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翌日、まだ陽も上る前の列車でジャイプルへ向かう予定だった俺は1人静かに宿を出ることにした。バックパックを担ぎ、1階へ降りるとソファーで右頬を少し黒く染めたワグニが毛布に包まって眠っていた。起こそうかなとも思ったけれど、俺はソファー下に落ちた毛布をワグニにかけ、宿を出た。


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これからいよいよゴールデントライアングルの一つ、ジャイプルへ移動である。
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バラナシからデリーへ戻る列車の中で俺は夢を見た。目が覚めてもその夢はシッカリ覚えていて、俺はその夢の内容をノートに書きとめた。不思議な夢だった。夢の中でも俺は高熱を出してうなされており、夢の中でふと目を覚ますとリサが看病してくれているという夢であった。正直な話リサとは随分疎遠になっていて自分でもできる限りリサの事は考えないようにして過ごしてきた。それは思い出すと辛いことであったし、思い出しても空しいだけだというのを自分でも痛いほど分かっていたからだった。

夢から覚め、蒸し暑い列車内で天井を見上げ余韻に浸っていると、これまで考えないように努力してきたのに携帯電話に入れておいた南米の写真を見たい衝動に駆られる。「駄目だ・・・」と思っていても「少しだけ」と携帯電話を手に取るともう止まらなかった。数々の思い出が頭の中を駆け抜け、南米だけでは終わらず中東、アジア、その他の写真を次々と眺めた。中でも印象に残っているIさん、Yさん、カナ、リサ、Uさん。俺は旅をする中で彼等と出会い、忘れることの出来ない素晴らしい思い出を作ってきた。時には悲しい思いもしたけれど、旅に出なければ得ることのできなかった貴重な経験も沢山してきた。今思い出すと俺はつくづく人に恵まれたんだなと思った。行く先々で出会った人に助けられて俺はここまでくることができた。思い起こせば1番最初に訪れた東南アジアでは長いこと一緒に行動する仲間には恵まれなく1人で行動する事が多かった。そして認めたくなかったけれどインドでもそれは同じだった。皆元気してるのかなぁ。達者で旅をしているのかなぁ。再び目を瞑り、彼らの事を思いだすと情けないことに少し涙がこぼれた。バラナシで衰弱しきった体に加え、このインドという国がどうにも好きになれず、ホームシックにもなっていた俺はどこか弱気になっていたのかもしれない。


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3度目のデリーに到着し、宿へ向かう。

ドミトリーにいつものようにチェックインし、その日は結局何もする気が起きずに横になっていた。翌日、宿のオーナーが俺に話があるというので言ってみることにした。

オ「よう。元気かい?」

俺「うん。ぼちぼちだよ。どうしたの?用事って?」

オ「ああ、お前まだジャイプルとかアーグラとか行ってないよな?」

俺「うん」

オ「行くんだろ?」

俺「あ~。今すぐには行く気はないかなぁ」

オ「そうなのか?」

俺「うん。せめて1週間はデリーでユックリ過ごすことにするよ」

オ「そうか。デリー、ジャイプル、アーグラはゴールデントライアングルって呼ばる有名な観光地だって以前話をしただろ?」

俺「あ~言ってたような言ってないような」

オ「とにかく人気の観光地だから列車のチケットも取るのが一苦労なんだ。もし必要ならチケットも取るから言ってくれよ」

俺「うん。因みにいくらなの?」

オ「よしよし!のってきたな!まずデリーからジャイプルに行くだろ?ジャイプルはビッグシティだから3日は必要だろう。そうするとジャイプルで2泊だろ?そこからアーグラだな。タージマハル見たいだろ?タージは絶えず混雑してるから人のいない朝に行くのに限るだろう。ならアーグラでも1泊だろうな。うーん値段は7500ルピーだな」

俺「7500!?」

オ「安いもんさ!アーグラは治安が悪いし、ジャイプルは広いから宿を探すの大変だろう。ここで押さえておけば駅までスタッフが迎えに来てくれるからお前は凄く楽だぞ?」

俺「でも高すぎない?」

オ「何言うんだ!プールもあるグレイトなホテルなんだぞ」

俺「あのさ・・俺1人旅してるのね?いい?1人でプール入っても楽しくないでしょ?泣いちゃうよ俺?」

オ「そんな事ないさ!お前は行ったことないから分からないんだ」

俺「あーいいよ。無しね。無し」

オ「おい、せめてアーグラだけでも1泊しとけよ。アーグラは治安が悪いんだ。デンジャラスなんだ。だから絶対宿は必須だぞ」

俺「自分で探すからいいよ」

オ「その間が危ないんだよ!」

俺「いーってばウルサイなー」

オ「じゃあ電車じゃなくて車ならどうだ?エアコン付きの日本車でアーグラとデリーを快適に日帰りできるぞ?な?な?」

俺「だからいいっての。じゃあさ、電車のチケットだけ取ってよ。最低のクラスでいいよ」

オ「それは出来ない。俺だって無料で仕事するわけじゃないんだ。ちょっとは儲けさせてくれよ」

俺「儲けさせる程俺は金持ってないの。他当たって」

オ「ちっ。なんだよ。もういい行けよ」

俺「お前が呼んだんだろうがクソ野郎!!!」

オ「なに!?」

ハッ!!いかん!バラナシで体調崩した時にインド人に優しくする、コイツ等だって悪気があってやってるんじゃないと思ったばっかりじゃないか・・・。

俺「ごめんごめん、俺も悪気はないんだ。でも本当にお金無いんだよ。だから自分でトライしてみるよ」

オ「そうか。分かった」

ホラ、優しく接すれば分かってくれるじゃないか。

俺「じゃ、俺駅に行ってみるよ。ついでに何か昼飯でも食べてこようかな」

オ「ああ、行ってらっしゃい」


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宿を出て駅へ向かう。相変らずの客引きに少々ウンザリしつつも笑顔で切り抜け、駅へ向かった。階段手前にいる客引きも軽くスルーし、2階の外国人チケット売り場へ入ると日本人3人組がチケットを購入していた。これまでの苦労話などを話しつつ、インドで何か美味い食い物はないのか尋ねると、美味いかは別としてマクドナルドにマックマハラジャーなるご当地マックがあるらしい。これは食わずにはいられないだろう。そもそも毎日カレーで飽き飽きしていた所だ。チケット売り場は相当に混雑していたので、この日俺はチケットを購入するのを諦めてマクドナルドへ行く事にした。彼らが言うにはコンノートプレイスという場所にあるらしい。リクシャで20ルピーも払えば十分らしいとの事なので、早速駅前からリクシャを拾うことにする。

おっさん「ようジャパニー!!リクシャだろ!?リクシャ探してるんだろ!?」

俺「お前・・・よく分かったな。そうだよ」

お「さぁさぁ乗れ!俺はベテランだからこの辺の観光なら俺に任せてくれよ!どこに行くんだ?ラールキラー?オールドデリー観光?メインバザールの穴場に連れてってやろうか?」

俺「いや、マクドナルドに行って」

お「え・・マクドナルド?」

俺「うん」

お「観光してからだろ?」

俺「いや、今行って。マクドナルドだけでいいよ。20ルピーでいいんでしょ?」

お「おい待てよ。マクドナルドってどこにあるんだ?」

俺「コンノートプレイスって場所にあるらしいよ」

お「コンノートか。あ~分かったよ」

リクシャはブツブツ文句を言いつつわずか10分でコンノートプレイスに到着。メインバザールから然程離れてもいないのにどこか垢抜けていてスーツを着たインド人が歩いている。キョロキョロと辺りを見渡すとマクドナルドの他にケンタッキーもあるしお洒落な服を売っている店まである。あまりの違和感に俺は挙動不審になっていた。マクドナルドの中を覗きこむと日本と違い、家族連れがワイワイ食事をしている。ファーストフードというよりはファミリーレストランに近い。


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俺は迷うことなくマックマハラジャーを注文した。

店「ごめんなさい、売り切れなのよ」

俺「売り切れなんかあんの!?凄い人気だね・・・」

店「ごめんなさいね」

俺「じゃあオススメない?」

店「このベジバーガーなんかどうかしら?ビーフを使ってないからヒンドゥー教徒のアナタにも大丈夫よ!」

俺「じゃ・・・じゃあそれで・・・」


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わざとなのか逆さまに手渡してきた包装をあけると、なにやら緑色のハンバーグが出てきた。どうみてもクロレラや青汁飲んだ後のウ○コです。有り難うございました。肝心の味は想像通り。肉でもないし野菜でもない。非常に微妙な味だった。不完全燃焼でマクドナルドを後にし、帰りは歩いて宿へ。

宿へ戻ると早々にオーナーが再びチケットの購入を薦めてきたが、完全無視で部屋へ戻った。もう日本に帰る気分にもなっていたが、やはり意地でもタージマハルだけは見なければならないだろう。日本で言えば浅草に行って雷門を見ないようなものだ。この日の晩、俺は思い出したように1通のメールを送った。相手はタイで出会った大学生3人組だ。時間的にデリー付近にきていても変ではない。やはり旅は道連れ、ワイワイ大勢の方が楽しいに決まっている。俺はメールを送ると、1人宿の屋上にあるレストランで酒をかっくらい、酔った勢いでリサにまでメールを送った。
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早朝、ふと目が覚めた。

周りを見るとまだ皆毛布に包まって眠っているのを横目に俺はそろそろと置きだした。階段を下りてO君の個室をノックするもO君が起きる気配はない。昨晩沐浴しようと盛り上がったが酒の勢いと言うものもある。まずどんなものか見てみるのもいいだろう。時計を見るとまだ朝の7時前だ。俺は宿を出てガードへと1人向かった。


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ガンガーからの風が冷たい。気温は間違いなく一桁だろう。眠い目を擦りながら階段を下りていくとガンガーは霧につつまれていた。


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その中で服を脱ぎ沐浴をしている人々を見つけた。少し離れた位置に座ってその様子を見る。この寒いのによく川になど入れるなと関心していると沐浴をしている現地のおっさんが手招きをしている。とても入る気になれないので笑顔で首を横に振り、その様子を観察していた。手を合わせ、一歩ずつ川に入っていく。その後両手で水をすくい口に含むと頭まですっぽりと浸かった。俺から見るに腹を壊すとか、具合悪くなるというその前に寒いだろうの一言だ。まだ観光客の姿は一切見えず、勿論観光客の中で沐浴する人の姿は皆無だった。俺は腰を上げ、先日飲んだチャイ屋へ向かい冷えた体をチャイを飲むことで温めた。例えこれがガンガーの水で入れたチャイだとしても沸騰させているし問題ないだろう。今いるムンシーガートから足を伸ばして1番大きく賑わっているガートであるダシャーシュワメートガートへ行ってみようかとも思ったが気温が低く寒いので俺は途中まで歩き、Uターンして宿へ戻った。

宿へ戻ってもまだ誰も起きてはいなかった。O君に限ってはこの日昼過ぎに起きてきた。そしてそれが全ての災いを招いたのでもあった。宿に戻った俺は食堂に置いてあった日本語の小説を読んで時間を潰した。昼過ぎ、宿の食堂でカレーを食べているとO君が頭を掻きながらやってきた。

O「おはよーす」

俺「やっと起きたか~。おはよー。俺早起きしてガート行ってきたよ」

O「え?!沐浴したんですか!?」

俺「無理無理wwまず寒過ぎて川に何か入れないよ」

O「ですよね。この時期のインドは寒いですもんね・・・」

俺「仕方なね。俺達は沐浴をしようと思った、でも寒くてできなかった。決してガンガーに入るのをびびったわけじゃない。これでいいよね?」

O「いいと思います。あーあ、今日は何かするんですか?」

俺「いーや。特別予定はないよ」

O「じゃガート沿いを歩いて火葬場のあるマニカルニカーガートに行ってみません?」

俺「あー、それもいいね。行こうか」

そして俺達は火葬場となるマニカルニカーガートへと向かった。ここバラナシはインド中の遺体が運ばれてくる。火葬場では絶えず煙があがっており、次々と布に包まれた遺体が燃やされていく。遺体は一度聖なる川ガンガーの水に浸され、清められてから荼毘にふされる。火葬が完全に終わるとその灰と遺骨は家族の手によってガンガーへと流されていく。例外としてまだ人生経験の少ない子供や、人生を超越した存在の僧侶のみ荼毘にふされず、手足や体に重りとなる石をまきつけられ川に沈められるそうだ。

外へ出ると朝とはうってかわって気温も上がり、Tシャツ1枚でも汗ばむような陽気だった。乾期で水の少ないガンガーの対岸までスッカリ見渡すことができ、観光客を乗せたボートがガンガーを行きかう。とめどなく押し寄せる物売りの少年、バクシーシを求める人を掻き分け、ガートへ降りると昼過ぎなのに沐浴をしている人がいた。

O「これ別に昼でも沐浴とかするもんなんですね」

俺「本当だね。なんか朝ってイメージだったけどさ」

O「昼なら寒くないしいけそうじゃないですか?」

俺「沐浴?」

O「はい。ちょっと入るだけだし、お互い写真取り合いません?」

俺「え~マジで?」

O「あれ?昨日の勢いはどこにいったんですか?」

俺「いやね、朝沐浴風景を見てたんだけど頭まで浸かって水飲むのよ?」

O「そりゃ体内も清めなければなりませんしね」

俺「あ、そういう意味なのね」

O「なんだと思ってたんですか・・・」

俺「そういや毎朝この川の水で入れてるって言うチャイ飲んでるし、ちょっと飲むくらいなら平気かな?」

O「きっと大丈夫ですって!」

俺「じゃあちょっと下まで降りてみない?」

O「いいですよ」


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ガートの下まで降りて水をすくう。思ったより濁っていない。

O「うわwwww何してるんですか!」

俺「え?触るくらい平気っしょ」

O「ええええ」

俺「お前これに入る気なんだろ?大丈夫だよ。ほら、これメッチャ透き通ってんで?むしろ飲めそうじゃない?」

O「無理無理!!」

俺「どれ。ペロペロ

O「うわぁ・・・・・」

俺「うん。普通の水だねこれ。おし!明日沐浴決行しよう!」

O「なんか立場逆転したなぁ」

この日、俺達はその後マニカルニカーガートで荼毘にふされている人々の風景を延々眺めていた。法外な薪代を請求してくる腐れインド人と喧嘩をしつつ、ただ延々と燃えている人の風景を眺めた。炎の周りには遺体のおこぼれを狙っているのであろう野犬にカラス、火葬の順番待ちをしている遺体が数多く並んでいた。日本では決して見ることの出来ないこの風景を眺めていると不思議とO君との会話もなかった。人って結局死んだらどうなるんだろう。どこに行くんだろう。柄にもなく、そんな事をずっと思った。

帰り道、ポップコーンと水を買って宿へ戻り食堂でカレーを注文した。そしてそのカレーが出来上がるまでの間、俺に悪夢が襲った。最初は少し便意をもよおす程度だった。下腹に違和感というのだろうか。O君に「トイレ行ってくる」と伝えトイレに入ったが何も出ない。しかし下腹が張っている感じがするので少しでも出してやろうと粘る。だが出ない。そのうち少しずつ痛みが出てきだし、10分後には立っていられなくなる位腹が痛くなった。額からは脂汗が流れ、口は渇き、足は震えた。尋常じゃない痛みにただ事ではないと思った俺はデリーで購入した下痢の薬を飲もうと部屋へ向かった。残り1粒だった薬を口に含み、水で流し込み横になるともう立ち上がる事はできなかった。

今まで経験した腹痛には波があり、痛みと通常のインターバルが必ずあったのに今回はエンドレスで痛い。うめき声をあげながら体をよじるしか出来ず、シーツを掻き毟りながらのた打ち回った。間違いなく昼間に飲んだ水だろう。しかし飲んだと言っても本当に舐める程度、量にして5cc程度だ。しばらくするとO君がカレーを持って部屋に来てくれた。

O「ぷらさんカレ・・・ちょっとどうしたんですか!?」

俺「はわわわ・・・・あああ・・・・」

O「昼間のですか!?」

俺「はぁ・・・・はぁ・・・」

O「薬あります?!大丈夫ですか!?」

俺「あ・・・・はぁ・・・・はぁ・・・」

何を聞かれても声を出す気力すらない。毛布を何枚も被せても寒い。気が付くと熱も出ているようだ。俺はこの宿に来たとき横一列に並んで倒れている大学生の姿を思い出した。まさしく今俺はあの症状になっていた。ふと、気が付くと真夜中になっていた。気を失ったのか眠ったのか分からない。痛みは治まったのか・・・そう考えた瞬間悪夢とも思えるあの痛みがまた襲ってきた。おまけに吐き気もするし便意も半端ではない。俺は這うようにしてトイレへ向かった。もう汚いなどとは言ってられない。泥まみれのトイレを這って進み、陰毛やら汚れが付いている便器を抱き抱えると胃の中が空っぽになるまで俺は吐き続けた。そして休む暇も無く水だけの便が出た。


干物になるかと思った。


その晩、俺は祈った。謝った。

「お願いします。もう2度とガンガーの水なんか舐めません。沐浴しようなんて思いません。本当にすいません、真面目に生きます。バクシーシをちゃんと与えます。だから・・・だから助けてください」

何に祈ったのか、神になのか、仏になのか、インド人になのか、俺は涙を流しながら祈り、そして吐いた。その吐き気と下痢は一晩中続き、とても眠ることなど出来なかった。朝になりベッドに戻って横になっているとO君が見舞いにきてくれた。昨晩よりはほんの少し良くなり会話できるようになっていた。ドミトリーの他の宿泊客の皆からも手厚い看護を受けた。これは本当に嬉しかった。きっと1人だったら死んでいたと思った。


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O君が水を届けてくれ、S君というドミトリーで隣のベッドだった大学生が薬をくれ、日に日に俺の体調は回復していった。そして5日目、なんとか立って歩けるまでに回復をした。しかし立ってあるけるとは言ってもカレーのような刺激のあるものなど食べられるはずもなく、5日間俺は水とフルーツだけで過ごした。一週間もするとドミトリーの顔ぶれはほぼ変わり、O君もついにブッダガヤーへと旅立っていってしまった。もう俺にはこの時ブッダガヤーや他の場所へ移動する気力は残っていなかった。とにかく早くデリーに戻りたかった。しかし列車のチケットも持っていないし、まだ夜行の列車に乗って移動するのも不安だった。

結局俺はこのバラナシにその後4日滞在し、5日目にチケットを購入しデリーへ戻る事になった。列車の中で俺は怒りに打ち震えていた。聖地バラナシ。バックパッカーとは切っても切り離せないインド。その聖地で俺は沐浴をすることもなく、観光をすることもなく、ただ吐き、下痢をして戻っただけであった。
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