世界中をぷらぷらしてきた

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突然だが、飛行機のチケットには大きく分けて2種類のチケットが存在する。1つはOPENチケット。もう1つはFIXチケットだ。前者のOPENチケットというものは、長期旅行者がよく使うチケットで往路・復路の日付を自分の好みで変える事が出来る便利なチケットだ。「3ヶ月OPEN」と書いてあるチケットならば、飛行機で往復3ヶ月以内に往路・復路と1回ずつ使える航空券のことで、帰りの日付は1カ月目でも2カ月目でも期間以内ならばいつでもかまわない。3ヶ月以内ならOKというチケットなのだ。後者のFIXチケットというのは、一般的なチケットの事で往路・復路の日付が最初から決まっており変更は出来ないチケットの事である。そして俺は今回FIXチケットで旅に出ていた。よって帰る日は必然的に決まっているのであった。これには大きな理由が2つあった。まず、家族を納得させる為だ。帰国日を教えておくことで少しでも安堵感を与える事ができからだ。2つ目は自分の為だ。旅では「沈没」という言葉がある。何もせずに気に行った物価の安い街で目的も無く、ただ酒を飲んで寝るだけの生活をしてしまう事だ。俺はこれを抑止するためにFIXチケットで旅に出た。すまん。嘘をついた。正直OPENチケットの存在を知って今びびってる。理由は今考えた。

ここカンボジアに入ってから約1週間になろうとしていた。アンコール遺跡群のパスは残り1日だけだ。しかしまだ俺は本格的にアンコールワットを見れていなかった。天候が曇りだったり、体調が悪かったり、動きたくない日だったり。しかし残り1日しかパスは残っていない。ようやく俺は決心した。今日アンコールワットに行こうと。その旨をドライバーの兄ちゃんに伝えると、どうしても見せたい遺跡がもう1つあるという。名前は「バンテアイ・スレイ」。ここから約20km程離れた場所にある遺跡なのだそうだ。地球の歩き方によると他の遺跡群とは違い、とにかく装飾に長けており、「東洋のモナリザ」と呼ばれる美しい彫刻があるのだとか。距離的に考えて体力のあるうちに遠くの遺跡を見た方がいいと判断した俺は、本日バンテアイ・スレイ→アンコールワットの順で回ることにした。


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何度も言うが俺には金がない。タクシーで遺跡まで行く金も無ければ、夜レストランで飯を食う金もない。いや、正確に言えば多少はあったけれど、まだまだ旅初心者の俺にはどこで思わぬ出費があるかも分からず、怖くて使えなかった。手持ちの金は言わば俺の最後の保険のようなものだったのだ。結局俺は兄ちゃんの助言を無視し、スクーターの後ろに乗って往復40kmの荒行を決行した。日本と違いどこまでも道が舗装されているとは限らない。外は照りつける太陽のせいでとにかく暑い。スクーターの後ろなので保険もかかってはいない上ノーヘルだった。泣きたくなるほど尻が痛くなり頭が焦げるほど暑くなった頃、ようやく目的の遺跡へと到着した。その遺跡は他の遺跡より一回り以上小さかった。パッと見、違う所と言えば大きさと使ってる石の色が浅黒くなく、肌色に近い感じの石だった。


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遺跡に入って俺は息を飲んだ。とにかく装飾が細かい。


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(東洋のモナリザ)

しかし遺跡の規模が小さいので僅か15分で飽きてしまう。それ以前にここ3日連続で猛暑の中遺跡巡り。流石に遺跡も飽きてきた。日本人の俺にとってカンボジアの遺跡群はどれもこれも同じに見えてきてしまう。しかし、残るは念願のアンコールワットである。これは期待せずにはいられない。俺は再びスクーターの後ろに乗り、アンコールワットへと向かった。

俺はドライバーの兄ちゃんに言った。

俺「俺、ここは本当に見たかった遺跡なんだ。だから3時間後に迎えに来てくれないかな?」

兄ちゃん「分かった。それじゃ3時間後にここね」

俺「うん、ありがとう。じゃ、行ってくるよ」

時間は丁度正午だった。アンコールワットはやはり他の遺跡とは群を抜いて違っていた。観光客の数もさることながら、整備された駐車場。他の遺跡では見ることの無かった近代的な大型バス。中から下りてくるのは綺麗に着飾った観光客。立派なホテルも近くにはあった。そのホテルのレストランで何か食べる事ができたならどれだけいいか・・・。


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レストランを横目に俺は我慢していつもの通り屋台でフライドライスをかき込んだ。


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アンコールワットは大きな堀に囲まれている。丁度中央から遺跡を正面に見て堀の真ん中にかけられた通路を歩いていく。


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朝日を見に来た時の事が頭の中でよみがえる。


そしてついに・・・・。



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俺はアンコールワットに辿りついた。10日前、俺は日本にの実家の部屋にこもってゴロゴロしていた。これは現実なのかと思った。あの時決断してなかったら、きっと俺は今でも部屋にこもっての生活を送っていただろう。そのギャップを、ここアンコールワットは十分に感じさせてくれた。


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アンコールワットの中で過ごした時間は驚くほどアッという間だった。


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上部に登って外を見るとジャングルが広がっていた。

後に知った事なのだけれども、アンコールワットは比較的最近、1860年発見された遺跡なのである。しかも偶然に発見された遺跡なのだそうだ。広く点々とある遺跡群がそれまで発見されることなくジャングルの奥地に眠っていたというのは凄いことである。南米ペルーのマチュピチュもその類だ。


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(wikiより拝借)


このジャングルに囲まれた奥地で、当時生活していた人が見たものと然程変わりない景色を俺は今見ている。さらに胸が熱くなった。


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そしてつかの間の3時間を過ごし、俺は宿に戻った。宿に戻り俺は考えた。もっともっと他の国に行ってみたい。もっともっと他の国の文化を肌で感じたい。


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その夜、俺は観光客がまず行かないであろう市場へ顔を出してみた。もう怖いものなんかない。すっかりいっぱしの旅人の気持ちになっていた。ぷらぷらと市場を見て回ると香水を売っている場所に出た。とりあえずテスターがあったので試しに軽くつけてみる。う~ん、良かったらお土産にどうかなと思ったけれど日本人にこれは無理かな。そろそろ小腹も空いてきたし、またフライドライスを食いに行こうかとその場を離れた瞬間、店員に呼び止められた。

店員「おい!これは商品だぞ!使ったら金払え!(たぶんこんな意味)

俺「へ?」

店員「とぼけるなよ!今お前使ったろ!金払えよ!(たぶんこry)」

俺「は!?お前俺が日本人だからってふっかけてんだろ!?これ半分しか入ってないじゃないか!」

店員「い~や!それは立派な商品だ」

俺「どう見たってテスターだろうが!なんで商品なのに箱から出てるんだよ」

店員「早く金払え!使ったら払うのが当たり前だろ」

どうせこんな現地の奴等が買う商品なんてたかが知れている。この国の物価は恐ろしく安い。必要のない物を買わなければならないこと程腹立だしい事はないが、使ってしまったのは俺のミスだ。仮にこれが詐欺でもひっかかった俺が悪い。

俺「ちっ。いくらだよ?」

店員「1000円だ」






ブチッ






俺はキレた。

俺「ああ!?お前俺だって数字読めんだよ!ここの値札には150円って書いてあるだろうが!なんで1000円になるんだよ!」

店員「これは現地価格だ。お前は外国人だろう」

俺「どこにそんな商売があるんだよ!ふざけんなよ!」

店員「い~や、1000円だ」

俺「150円なら払う」

店員「お前は外国人だから1000円だ!」

俺は店員を無視し、150円分のカンボジア紙幣を叩きつけその場を去った。まるでタイの詐欺と一緒じゃないか。だが、違った場所が1つだけあった。



店員が走って追いかけてきた。



俺は必至で走った。逃げた。死に物狂いで逃げた。少しすると、自分の店を空に出来ないからか後ろで大声出して怒鳴られ、店員は諦めた。俺は商品を忘れてきた。久々に走ったことと、追いかけられて逃げ延びたことに何故か不思議と笑えてきた。俺は宿近くの屋台まで戻り、アンコールワットへ辿りついた自分への御褒美と、店員から逃げ切った褒美にスーパードライを注文した。

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死ぬほど旨かった。程良く酔いが回った頃、俺はある決意を新たにしていた。本当はタイ、カンボジアだけを周り日本に帰ろうとしていた。しかしまだ帰国の日まで12日ある。行ってやろうじゃないかベトナムまで。なんならラオスまで行ってやるよ。面白れぇよ東南アジア!どうせなら東南アジア1周してやる。そう心に決めた。そしてそれをわずか10日余りで実行したのが俺の運の尽きだった。


大馬鹿野郎だった。
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俺は、長いことブログの出版を夢見てきました。

旅を始めた当初ブログを書く気なんか全然無かったし、旅をしている最中もブログを書く気なんかさらさらなかった。そんな俺が何故ブログを書き始めたかというと家族の為だった。今まで引きこもりがちな生活を送っていた俺が急に家を離れて遠く海外で何の目的もなしにリュック1つでフラフラしているのを家族は凄く心配したと思う。その家族への「俺は今日も元気で生きているよ」という意味でブログを見てくれている読者さん、応援してコメントを毎回必ず書いてくれる読者さん。そんな人たちの気持ちに応えたくて旅を続けたという事実は少なからずあった。


いつしか助言で出版を前提に書いてみたらいいんじゃないかと言われた。


人生の目標が何も無かった俺にとって、それは大きな活力になった。だけど全然うまくいかなかった。粗末な文章に粗末な写真。記事は結局文字なので誰も信じてはくれなかった。


旅をしなくなって1年が過ぎた。


俺は何気なしに2ちゃんねる、ニュース速報vip板に唐突にスレッドを立てた。初めての2ちゃんねるデビューだった。最初は適当に旅の画像を貼って、自己満足で50レスもあれば上出来だと思った。


でもスレは1000まで完走した。


もしかしたら俺の旅に共感してくれる人がまだまだいるんじゃないかと思った。本音、俺は自分の旅の軌跡を他人に伝えたかった。何故なら俺は旅をする事で大きく人生が変わったから。だから、他の人にももっと旅に出て欲しかった。このブログがそのきっかけになれば、それで本望だと思った。


今、このブログがこの時間ここに存在するのは決して自分の意思じゃない。2ちゃんねるの、あの時のあのスレでレスしてくれた人達のおかげだ。断言できる。お互い顔は見えないけれど、それでも俺の気持ちは大きく動いた。動かしてもらった。これからも、見る人が1人になっても、その1人がいる限りこのまま書き続けていこうと思います。


改めて感謝申し上げます。


本当に有難うございます。素直な気持ちです。俺に活力を与えてくれて有難う。


明日からまたブログの更新を続けていきます。本当に本当にありがとう。またブログで会おう。
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昨晩眠りに就く前に俺は今日までの旅の事を思い返していた。日本を出てからまだわずか6日程度しか経過していないが確実に俺は異国の地に1人で立っているのであり、確実に詐欺師共の餌食になってきた。餌食になる理由は沢山あるが、まず俺が自分に甘いこと。余りに簡単に他人を信用し過ぎること。ここを日本と勘違いしているということだ。数えればまだまだ沢山あるはずである。そして俺は何故旅の行き先に東南アジアを選んだのか思い出してみた。旅に出る前の東南アジアのイメージというものは貧困に苦しむ国が多々あって、そして文明が発達していなく今でも原始的な暮らしをしている一般市民が多い。衛生面は悪く、物価が安い。そんな漠然としたイメージだだった。考えてみるとそこに魅力は感じられないが、それでも東南アジアを選んだことには理由があった。アンコール・ワットの存在である。俺はアンコール・ワットがいつ、誰が何のために作ったものなのか全く知らない。そして知りたいとも思わない。でも見たい。理由なんか無い。ただ見たいのである。このように特別な理由が無くても自分を突き動かすものって結構多い。だが日本ではそれがあっても俺は動こうとしない。チャンスはあるのに動かない。動けない。そんな自分が嫌で、それを変えたくて俺は旅に出たのだ。

そして今まさに俺はこのアンコール・ワットのある街、カンボジアのシェムリアップに来ている。何故アンコール・ワットを見に行きたいのにタイまでの航空券を買ったのか。理由はただ一つ、安かったからだ。自慢じゃないが俺は金がない。だからいつまでもこの街でダラダラと無駄な時間を過ごすことは俺には許されない。俺は決めた。明日アンコール・ワットに行こうと。少しウトウトしかけていたが俺はベッドから飛び起き、宿の男にその旨を伝えた。男は「それじゃ俺がドライバーになろう」と言ってくれた。アンコール・ワットでは朝日を見ることができるらしい。今日、俺は湖で夕陽を見ることができた。なら是非朝日も見てみたい。念願だったアンコール・ワットの朝日を絶対に見てみたい。それで俺の中の何かが変わるかもしれない。俺はドライバーに朝日を見に行きたいと伝えた。ドライバー曰く、朝の5時に出発すれば朝日を見れるようだ。明日の朝は早い。その後俺は部屋に戻り寝酒に缶ビールを1本飲み、床に就いた。

翌朝、4時半に目が覚めた。眠い目を擦りつつ眠気を飛ばすために水シャワーを浴びて煙草に火をつける。カーテンを明けるとまだ薄暗い。しばしボーっとしていたら下痢になった。今日の1日は長い。日本と違い公衆便所なんぞこの国にはない。遺跡の中で便意をもよおしたら野●確定だ。俺はバックパックに入っている常備薬の正露丸を通常の倍の6粒飲んでドライバーとの待ち合わせ場所へ向かった。2度あることは3度ある。待ち合わせ場所に向かう途中にもしおっさんに再び出会ったらどうしようかと思ったが、おっさんは現れなかった。アンコール遺跡群に入るにはパスが必要になってくる。1DAYパス、3DAYSパスの2種類が売っているが俺は迷わず3DAYSパスを選択した。3日間で米40$。なかなか手痛い出費だが仕方ない。ユネスコ登録の世界遺産は見物料金が異常に高い。これはきっと遺跡の修復などに使われるのであろうけれど、40$は高過ぎる。目的のアンコールワットに到着すると既に朝日を待ちわびてる人でいっぱいに。人ごみの中で見るのがどうしても嫌だったので草むらから朝日を拝見。


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草むらに移動して正解だった。朝日はもうまもなく昇ろうとしていた。


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そして・・・・。


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ついに陽は登った。これがアンコール・ワットの陽の出なのだ。何かが変わるかもしれない、そんな甘い幻想を抱いていたのが現実になった瞬間であった。俺の心は突き動かされなかった。確かに綺麗だった、燃えるようなオレンジ色の太陽が東の空から昇ってくる。しかしそれは日本で見る日の出となんら変わりはなかった。背景のアンコール・ワットがあるか無いかだ。だがこれで満足しなくて良かったのだ。満足しないおかげで俺は後に他の国々も回ることになる。いつか俺の心を突き動かしてくれる何かがあるはずだと信じて。


帰り際、アンコール・ワットを囲む堀の水面はとても綺麗だった。


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風も無く、天気も良く、水面も穏やかだった。陽は完全に登っていて、後ろを振り返ると完全に陽の光に照らされたアンコール・ワットがそこにはあった。内部は後日観光することとし、今日は一旦宿に戻ってから他の遺跡群を見て回ることとなった。この日はドライバーと話し合って「バプー・オン」「ピミアナカス」「プリヤ・パリライ」「アンコール・トム」の4遺跡を見学。中でも印象に残っている「アンコール・トム」の写真だけ載せておこうと思う。


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遺跡を一通り回った俺はドライバーにお願いしてもう一つ行きたかった場所、地雷博物館へと向かった。ここ、地雷博物館は「アキー・ラ」氏が運営している博物館で、彼が掘り起こした地雷が展示されているものだ。彼はポルポト派時代に地雷によって両親を亡くし、彼自信も若い頃兵士として沢山の地雷を埋めたとのことだった。今でこそカンボジアも内戦が終わって平和が訪れたけれども、今でも無数の地雷が埋められており被害は後を絶たない。遺跡を見てて何度も気付いたけれど、少し奥に入っていくと有刺鉄線が張り巡らされており地雷注意の看板がそこかしこにある。

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地雷博物館には地雷の被害で手足を失った少年少女が沢山いた。博物館内には掘り起こされた地雷や、内戦の時の写真屋資料も展示してあった。


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最後の1枚は被害で命を落とした子供達。


当然のように日本に生まれ、日本で育ち、何不自由なく暮らしてきた俺。その中でも不平不満を常に語る。多分俺は日本という国に生まれただけでも凄く幸せなはずだ。少し気落ちし、ドライバーに宿に戻ろうと話す。ドライバーはそんな俺を察したのか言った。

ドライバー「俺はカンボジアが好きだ。俺はカンボジアという国を誇りに思っている。俺は今貧乏で、親も居ないけれど幸せだと思っている。いや幸せだと思わなくてはいけない。内戦が終わって平和な世の中になって生まれてきた俺は内戦時代に生まれた人達と比べ物にならない位幸せなはずなんだ。だから常に神様と仏様へのお祈りを忘れないようにしているよ。ぷらぷら?日本はいい国かい?ぷらぷらは幸せかい?」


俺は「うん」と胸を張って言えなかった。



少し自分が嫌いになった。
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おっさんのおかげで枕を濡らした翌日、俺は早々に目が覚めた。少し話は変わるけれど旅をする場合に旅人が必ず持っていなければならないものが何個かある。それを紹介しよう。


・時計(時間が分からないのは命取り)
・現金(当然)
・警戒心(当然)


この3つである。この当時、俺は現金以外のこの2つが欠落していたという事を先に書いておきたい。それでは本編に戻ります。

俺は早々に目が覚めた。部屋の時計を見ると朝の7時、夕陽を見るには随分と時間がある。カーテンを開けると陽の光の具合で相当に気温が高い事が感じ取れる。今日はとにかく湖が見れればそれでいい。時間は十分にある。人というのは心に隙が生まれるとついついハメをはずしてしまう。例に漏れることなく俺もそうだった。いつの間にか眠りこけてしまい、目が覚めると午後の2時を回ったところで空腹で目が覚めた。考えてみると昨日おっさんと食べたアモック以来何も口にしていない。昨日の宿の周りを見たところ、ここの宿の近所には屋台らしきものは無かった。少し歩いた所にオールドマーケットという市場があるのは確認済みだ。とりあえずそこで腹ごなしをしてから湖へ行こう。そうすれば時間も丁度いいはずだ。

俺は宿を宿を出てオールドマーケットへ向かい、フライドライスを食べた。これはチャーハンのようなもので何を食べたら良いか分からないときはこれを注文するといい。可もなく不可もなくの料理にありつけるであろう。たまに小石が入っててジャリジャリしてるけど。案の定の旨くも不味くもない微妙な料理で腹は膨れた。宿に戻って兄ちゃんに乗せてもらって湖へ行けば今日の行動は完璧である。食後の一服をしながらシェムリアップの街並みを見、俺は宿へ向かって歩き出した。歩き出して2~3分だろうか、声をかけられた。

















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おっさんだった。



おっさん「よう、今日湖に行くんだろ?乗せてってやるよ」

俺「おま・・・・おまえ・・・」

おっさん「もう湖は行ったのか?」

俺「お前のせいでまだなんだよ!なんの用だよ?もうドライバーは決まってるんだ。あっち行け」

おっさん「おいおい、冷たいこと言うなよ。俺が格安で乗せてってやるよ」

俺「信じられるか。ドライバーはもう決まってるんだ。いいから消えろ」

おっさん「どの船に乗るか決めたのか?」

俺「船?決める?」

おっさん「湖での夕陽は船に乗って見るんだ。湖は凄い大きさだから、船で360度見渡して水面だけになる場所まで行って夕陽を見るんだ。勿論湖畔からも夕陽は見えるがそれじゃ美しさは半減だ。だから船で見るのが絶対におすすめなんだ」

俺「ほお」

おっさん「俺の知り合いに舟の船頭やっている奴がいるから、昨日のお詫びも兼ねてそいつに頼んでやるよ。勿論格安でOKだ。さぁ、行こう!」

俺「お前知り合い多過ぎだろ」


俺は凄く悩んだ。こんなに悩んだのは高校入試以来かもしれない。俺は少ない脳みそをフル回転されて考えた。また同じ目に遇うんじゃないか。いや、もう1度だけコイツにチャンスをあげてもいいんじゃないか。根は悪い奴じゃないような気がする。でも宿にも俺を待っているドライバーがいる。

おっさん「さあ、行こう!早くしないと夕陽の時間になっちまうぞ」

俺「へ?まだ時間あるじゃん」

おっさん「だから、舟で見るなら船での移動の時間もあるだろ」

俺「そうか・・・」

おっさん「さあ、乗れよ」

俺「う~ん。分かった。その代わりマッサージ行ったりレストラン行ったり1度でも湖以外の場所に行ったらその場で殴るからな」

おっさん「そんな事するわけないだろう」

俺「お前・・・昨日・・・」

おっさん「早く乗れ!」

こうして俺は再びおっさんを信じる事にした。


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俺を乗せたおっさんのスクーターは土手沿いを走り続けた。ああ、やはり信じあう事って大切だ。またこうして人間として一回り成長することができたよ。ありがとうカンボジアとおっさん。スクーターが軽快に走り続けること20分、目の前に大きな湖が見えてきた。いや、これは湖というより平地から見ると既に海である。茶褐色の水面がどこまでも続いている。日本ではまず見れない光景だ。

おっさん「着いたぞ!ちょっと船交渉してくるから待っててくれ」

俺「うん!」

そういうとおっさんは颯爽と駆けていった。数分しておっさんが戻ってきた。

おっさん「お前ラッキーだな!船貸切でいいってよ」

俺「貸切!?マジで?」

おっさん「ああ!お前だけの為のスペシャルな船だ!」

俺「それいくらなの?値段高いなら俺湖畔からでいいよ」

おっさん「1000円だ」

貸切で1000円。宿2泊分。これはお徳なのか!?全然わからん。そもそも貸し切りにしなくていいんじゃないか?俺一人だし。誰か女性と二人きりでロマンチックな夕日を見るとかならともかく、一人だぞ俺。うーん。

俺「もっと安くならないの?」

値切ってみる。

おっさん「無理言うなよ。貸しきりなんだぞ。俺も長年紹介とかしてるけど貸切なんて聞いた事が無い。絶対にお徳だから乗るべきだよ」

俺「そっか・・・。うん。分かった」

あああああ・・・NOとは言えない日本人の俺><

おっさんは俺から1000円分のカンボジア紙幣を握り締めてまた走っていった。

おっさん「おーい!こっちだ!」

おっさんが呼んでいる。近付いていくと確かに船がある。

おっさん「さぁ、乗って楽しんでこい。俺は見終わるまでここで待ってるよ」

俺「マジ?待っててくれんの?2時間位かかるんじゃないの?」

おっさん「いいってことよ。気にしないで楽しんできてくれ」

多分、いや200%ぼったくられてるな。でもおっさんを待たせておいて舟は貸切。これで1000円なら日本人感覚なら激安だ。ああ、気持ちよく払ってやるぜそんなはした金!俺は颯爽と舟に乗り込んだ。

クルー「おいおい、そっちじゃない。こっちだ」

俺「へ?」







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俺が乗ったのはイカダだった。



俺「・・・・。」

舟にはクルーが3人。確かに貸切である。3人とも英語は全く話せない。意思の疎通すら怪しい。船頭がエンジンをかけると絶望と俺を乗せ、舟は水しぶきをあげながら進みだした。


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先程クルーと言ったがこの舟のクルーはこのガキと15歳位の若造と推定年齢?のおっさんの3人である。先行き不安で仕方ない。湖の真ん中で金を出せと脅されたらどうしよう。


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俺は新手の湖強盗の不安に加え、クルーとの意思疎通の不安よりも何よりも、この舟が沈没しないかだけが1番の不安だった。舟は揺れながら轟音を驚かせ湖の中ほどへ疾走する。


10分程進んだ頃だろうか。





ボンッ





俺「おう!?」

何やらクルー達が慌しい。後ろを向くとエンジンから白煙がモクモクとあがっていた。

俺「おいおいおい!大丈夫なのこれ!?」

クルー「OK!OK!」

俺「マジでOK?デンジャラスじゃないの?」

クルー「ノーデンジャラス!OK!」

俺「一体なんなんだよ」

舟のエンジンは完全に止まった。クルーが3人固まって何か話しはじめる。不安で仕方がない。その後彼らの取った行動でこのトラブルが何か判明する。












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悲運な事に船はエンジンがブロー。乗船してものの20分で舟は手漕ぎボートと化した。横を見渡せばまだまだ陸地である。俺は帰ろうと伝えたが言葉が伝わらない。帰ってくる言葉は「OK」のみだ。完全に漂流である。


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ヤケクソになった俺は上着を脱いでねじり鉢巻、完全にクルーの一員となった。


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30分程手漕ぎすると流石に廻りには何も見えないところまで来る。この景色は感動的だ。しかしその前にこの舟は港へ帰れるのか。


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すれ違う船には客が大勢乗っており、軽快に俺の船の横を通り過ぎていく。手漕ぎしている俺の舟を哀れんだ目で見ながら。チクショー!!!


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そのうちビール売りまでやってきた。もう完全にヤケクソである。俺はビールを購入し、飲んだ暮れ、そして寝た。目が覚めると舟は建物の前で止まっていた。湖の真ん中に建物!?キョロキョロと辺りを見渡していると突然日本語で話しかけられた。

男「オツカレサマー」

俺「お、日本語話せるの?ってかここどこ?」

男「サンセットを見るポイントだよ」

説明を聞くとどうやら湖の真ん中付近に小屋を建て、そこで夕陽を見せる商売らしい。小屋の中では欧米人が陽気に騒いでいる。俺は安心した。ここは安全な場所だ。舟を降り板敷きの小屋の周りを歩く。目下ではバシャバシャと凄い物音がしている。魚でも跳ねているらしい。そういえば焼き魚なんかを売っている輩もいる。俺はそっと下を覗き込んでみた。










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見なかった事にしよう。俺は帰りの舟がいっそう不安になった。

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そうこうしているうちに陽はどんどん沈んでいく。


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そして念願の夕陽だ。


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長かった。これを見るために・・・こんなものを見るために俺は・・・でもまぁ言うだけの事はあって綺麗ね。そんな感動の時間もつかの間。先程の日本語を話す男に再び呼ばれた。


男「ジカンダヨ」

俺「え!?もう!?他にまだ人いっぱいいるじゃん」

男「アナタタチノフネ、エンジンウゴカナイ。ジカンカカル」

俺「なるほどね・・・」

男「ソレト、カエリキヲツケテ」

俺「ああ・・・・ワニね。さっき見たよ。」

男「チガウ。ホモ

俺「へ?ホモ?」

男は笑いながら言っている。その男の視線の先を振り返ると、そこには先程俺をここまで乗せてきたクルーがもじもじしていた。終わった。

俺「おい、アイツホモなのかよ?」

男「うん、ホモ。有名。でも、ちんち●もおっきいよ」

俺「うわー聞きたくない聞きたくない」

クルー「もじもじ」

俺「もじもじすんな!」

さっき寝てる時になにもされてないだろうな。裸になんかなったのが逆効果だった。あああああ、完全に帰りの舟はフラグだ。俺を乗せた船は再び手漕ぎでユックリ進みはじめた。そして俺の横には何故か先程のホモが鎮座している。目は合わせてはいけない。が、時折手を触ってくる。その度俺は鬼の形相で「ノー!!」と言うのが精一杯だった。それでも寄ってくるクルー。何故か写真のジェスチャーをしている。俺は誠心誠意頭をさげ、写真を撮ってやるから俺に近付くなと言った。














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しかし言葉は通じない。何故か俺とホモのツーショット写真が出来上がった。1時間程ホモの攻撃に耐えながらゆっくりと舟は進んだが、ここで遂に漕ぎ手が疲労によりダウン。ホモは悠々と抜き去る他の舟を呼びとめ、ボートを紐で固定。俺等は牽引される形で港へ生還を果たした。



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牽引舟の水しぶきで俺の舟は泥まみれ。勿論俺も泥まみれにホモまみれ。


そして約束を破っておっさんは待っていなかった。


俺は再びぼったくられ、別なおっさんのスクーターで宿へ帰った。外はすっかり暗闇に包まれていた。
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昨晩到着したのが夜遅かったことと疲労困憊により泥のように眠ったのでどんな所に泊まったのか俺は全然分からなかった。それどころか宿代も分からない。いくら物価の安いカンボジアでも所持金の少ない俺には高い宿に泊まるのは死活問題である。そもそも疲れ過ぎててここの宿がシェムリアップのどこに位置していのか、それ以前に宿の構造自体が全く分からない。しかし部屋を見渡すと個室である。俺は恐る恐る部屋のドアを開けてロビーへと向かってみた。ロビーにはカンボジア人の女性がチョコンと座っていた。とりあえず当たり前のように日本語で話しかけてみるも話せない。「英語話せる?」と聞かれるも俺の答えは「NO!」。全くらちが空かないとはこの状況のことである。


どうしようもなく途方に暮れていると他の従業員がやってきた。彼は日本語を少し話せる事と、俺の単語だけ連発する英語を理解するという出来た人間であった。とりあえず話をまとめると、こんな感じである。


・ここの宿は1泊600円
・宿には俺とカップルの3人しかいない(Sさん&Aさんではない)
・ここからアンコールワットまで20分
・この周辺の治安はそんなによろしくない


う~ん。俺はとりあえずアンコールワットを見るためだけにこの街に来た。しかし何も調べてないのでアンコールワットは遺跡という事しか俺には分かっていない。まずアンコールワットを見るという目的を果たせばこの東南アジアの旅の目的は果たせそうだったので、続けざまに彼に色々話を聞いてみる。


・アンコールワットへは入場券が必要
・この場所から歩いて行くのは無理
・アンコールワットは、アンコール遺跡群の一つに過ぎない


なんだと・・・。


更に話を聞くと今日は既に昼を回っているので見に行くのは無理だとのこと。それに徒歩ではとても見て回れるものではないので、タクシーを雇わないと全て見て回るのは無理ということだった。するとそこに日本人のカップルが戻ってきた。これはチャンス!話を色々聞くとしよう。


俺「こんにちは、アンコールワット見てきたんですか?」

男「あ、ど~も。そうです。タクシーで色々回ってきました」

ふむ。どうやらタクシーを使わないと見れないというのは騙されてないようだな。

俺「この街って遺跡の他に何か見る所ってありますか?」

男「う~ん。僕等はここに一週間いるんだけど、初日に行ったトンレサップって湖の夕陽がキレイだったよ」

ほぉ。湖で夕陽か。そりゃカップルなら楽しいだろうね。でも俺1人だしね。

すると宿の男がこれからお前さえ良ければ湖まで連れてってやると言い出した。俺は悩んだ。しかし今日既にアンコールワットを見に行く事はできないし、このまま部屋でゴロゴロしてたら日本にいる時と何も変わらない。だけどこの宿の男の口車に乗せられて後から法外な値段を突きつけられても困る。ここは自分で適当に一般のタクシーと交渉した方が吉だろうと判断。宿の男に断りを入れた。

これが全て間違いだった。

俺はちょっと近所を散歩してくると宿の男に伝え外へ出た。


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外は刺すような日差し。その中大通りまで歩いた。するとオッサンが声をかけてきた。

おっさん「よう、タクシー必要じゃないか?どこ行くんだ?」

俺「えっと、トンレサップって湖行きたいんだけど」

おっさん「おお、あそこまでなら30分位だな。300円でいいよ」

これは高いのか安いのか分からないが交渉すると日本円で250円で乗せてくれる事になった。ま、いいか。このまま炎天下の中歩くのも辛いし、まだ旅は始まったばっかりだし、少し位贅沢してもねぇ。


おっさん「さ、こっちだ」

俺「ほいほ~い」









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20分後、何故か俺はおっさんとスクーターで2人乗りしていた。



俺は日本で中型のバイク免許を持っている。しかし女の子と2人乗りした事は1度もない。1度もだ。それなのにカンボジアでおっさんと今まさに俺は2人乗りしている。何故だ。何故こうなった。考えてたら泣けてきた。更にバイクは10分程走る。30分で湖と言ったわりには全然着かない。それどころか街中らしきところを疾走している。ほどなくしてバイクは街の一角で止まった。俺の脳内に「?」マークが浮かぶ中、おっさんは言った。

おっさん「着いたぞ!ここのマッサージ店が最高なんだ」

俺「おい・・・・」

おっさん「全身コースでいいんだよな?」

俺「おい・・・」

おっさん「俺の名前で安くしてくれるから入ろう!さぁいこう!」

俺「おい・・・・」

おっさん「さぁ、さぁ早く」

俺「このクソボケがぁあああ!誰がマッサージ店に連れてけって言ったんだ!俺は湖で夕陽を見に行きたいって言ったんだぞ!お前話聞いてんのか!?俺の英語がメチャクチャでもトンレサップとマッサージは聞き違えねぇだろうが!

おっさん「お・・・怒るなよ」

俺「けっ」

おっさん「な、怒るなよ。お詫びに激安でマッサージしてくれるようにお願いするからさ。いいだろ?この街はマッサージが凄く有名なんだぜ?な?」

確かにマッサージは一度やってみたいと考えていた。でもそれはタイ式マッサージであってカンボジアではない。しかしどう考えてもここの場所から湖まで遠いだろうし、また炎天下の中おっさんとスクーターに乗るのは気が引ける。渋々俺はOKした。

俺「安いならいいよ。そんで幾らなの?」

おっさん「色々コースがあるんだけ・・」

俺「1番安いのでいい」

おっさん「じゃ、フットマッサージだな」

俺「それいくら?」

おっさん「500円だ」

俺「むぅ。約一泊の宿泊代金だけど。ま、いっか」

おっさん「しかもスゲェ可愛いキュートな女の子ばっかりなんだぜ」

俺「なななに?い、いや、女の子が可愛いからってマッサージしようと思ったわけじゃないんだからな。そこ勘違いしないでくれよ」


そう言い放ち颯爽と俺は中へ入った。受付で足だけの1番安いフットマッサージを依頼。するとおっさんが横から何やら話をし、フットマッサージ+αのマッサージを俺は受けれる事になった。ちょっとラッキー。可愛い女の子に足を揉み揉みされて、しかも+αってなんだよ。なんかあるんじゃねぇの!?ねぇ!?あっちゃうんじゃねぇの!?


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20分後。俺はまた地獄を見ていた。




(どこが・・・どこがキュートなんだ。マッチョじゃねぇかよ。あのおっさん、マジぶっ○してやる」



女「(揉みながら)痛い・??」

俺「ダイジョウブデス。キモチイイデス」

女「それじゃ最後に肩とか腕のストレッチするから起き上がって」

俺「コレデイイデスカ?(椅子に座る)」

女「OK。じゃ、叩くね」

そう言うと腰付近から首元にかけて小刻みに叩いていくマッチョ女。


たたたたたたたたた



バシッ





俺「!?!?!?」






たたたたたたたたた



バシッ





俺「!?!?!?」




おい、ちょっと待て、何で最後に思いっきり頭を叩くんだ?頭は叩かなくていいだろう。しかも何故に思いっきりなんだ!?これが噂のノックアウト強盗ってやつか!?いやいや、そんなはずはない。ここはマッサージのはずだ。これには何かワケがあるはずだ。でも痛いのは嫌だ。頭を叩くのをヤメてもらおう。先ほど少し会話したがお互い意思の疎通は難しいようである。だがしかし人間誠心誠意を込めて話せば大概の事は通じるはずだ。

俺「ウェイト、ウェイト、何で頭叩くの?」

女「え?痛かった?」

俺「メチャメチャ痛いよ!」

女「ソーリー」

俺「頼むよマジで。それでさ、もう頭は叩かないでいいから腰とか叩いてよ。腰はスゲェ気持ちいいんだよね」

女「オーケー、分かったわ」

ほらみろ。気持ちを込めて話せば国籍なんか関係ない。皆同じ人間だ。喉が渇いたら水を飲むし、腹が減ったら飯を食う。基本的に頭を思いっきり叩いたら痛いのは分かってるんだから、お願いすればこうやって分かってくれるものなんだ。ああ、今日もまた一つ勉強になった。旅って素晴らしいなぁ。











たたたたたたたたた



バシッ






俺「もういい!フィニッシュ!」

女「おーう」


おい・・・。意味が全く通じない。これ以上馬鹿になったらどうするんだ。最後の最後まで何で頭を思いっきり叩かれたのか分からないが、お前絶対「分かりました」って顔してただろ?なのに・・・なのに何故!?お兄さん悲しくなっちゃうじゃない。とりあえずこれ以上叩かれてはたまらないのでフィニッシュコール。店の外に出でおっさんに文句を言う。全く伝わってなかったが。そして今度こそ湖に行くんだ。俺はおっさんに念を押した。押しまくった。おっさんは快く「OK」と俺に言った。

しかしスクーターが到着した場所はレストランだった。

おっさん「ここのアモックって郷土料理食わなきゃカンボジアに来たとは言わせないぜ」

俺「おい・・・・」

おっさん「さぁ、食おう!俺も腹減ったな~」

俺「おい・・・」

おっさん「ささ、早く行こうぜ」

俺「お前・・・湖じゃなかったのか?」

おっさん「だって腹減っただろう?俺も減ったからさ」

俺「コラァ!お前の都合で勝手にレストランなんかに連れてきてんじゃねぇ!なんでレストランなんだ!俺は湖って言っただろうが!腹なんか減ってねぇ!湖に連れてけ湖に!今スグだ!今スグ連れてけ馬鹿野郎!!

おっさん「なんでまた怒るんだよ。いいから、安いし美味いし食おうぜ」

俺「フーッ!フーッ!」

おっさんとマジ喧嘩したが結局レスランに入ってしまう駄目日本人の俺。断れないんだもの。僕、優しいから。仕方なく着席しアモックという料理を注文する。なんかヤシの身の中に何か入れて煮込んだような、それはそれは微妙な食べ物だった。これ本当に心から旨いと思って食ってんのかお前等?


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そして当然のようにおっさんの代金も一緒に支払わせられ、イライラしながら店を出た。今度湖に行かなかったら俺は絶対に許さない。絶対にだ!俺は再度おっさんに詰め寄った。おっさんは言った「今度は大丈夫だよ。湖な」。おっさんは満腹になったのか先程より軽快にスクーターを走らせた。30分後、おっさんは俺が泊まっている宿の前へスクーターをつけた。そして開口一番。

おっさん「いやぁ、飯も奢ってもらってご馳走様な。だから代金はいらねぇや」

俺「・・・・・・。」

おっさん「明日湖行けよ。明日の方がいいって」

俺「・・・・・。」

俺は全身プルプル震えていた。

おっさん「じゃ、またな」

こうしておっさんは走り去った。

怒りを抑えながら宿に戻ると宿の男スタッフが俺を探していた。

ス「ぷらぷら!どこに行ってたんだ!」

俺「あぁ、散歩してきたよ」

ス「歩いて行ったのか?」

俺「いや、適当におっさん捕まえて行って来たよ」

ス「駄目だ!駄目だ!どんな奴か分からないから危険だぞ!」

俺「ああ・・・最低な奴だったよ」

ス「何かされたのか?」

俺「いや、大丈夫だからもういいよ」

ス「ぷらぷら、本当に気をつけてくれよ」

俺「・・・・」

ス「俺等がどこにでも乗せてくから無茶はやめようよ」

俺「わかった」

ス「よし、明日は何か予定あるのか?」

俺「いや、何もないよ。もう何もする気が起きないよ」

ス「それじゃ明日こそトレンサップ湖のサンセットを見ないか?」

俺「うん」

ス「明日は天気がいいから最高だぞ」

俺「うん・・・・」

ス「それじゃ夕方4時に約束な!」

時刻は夜の7時を回っていた。

俺は軽く人間不信になりつつ、人知れず枕を濡らした。
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