世界中をぷらぷらしてきた

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ホワイトホースを飛び立った小型のプロペラ機の機内はひどい騒音でCAの声すら聞きとり辛かった。座席にTVもついていないので暇つぶしするにも何もすることがなく、俺はただただ窓の外を眺めた。どこまでも永遠に続いていそうな雪山と、どんどん小さくなっていくホワイトホースの街を眺めながらオーロラの事を思い出す。タイから日本へ戻る時も、エジプトから戻る時も、ペルーから戻る時もそうだった。このどうしようもなく寂しくなる気持ち。旅をする中で何度も「早く日本に戻りたいなぁ」という気持ちは沸くが、どんな過酷な国や嫌な出来事があった国でもいざ帰国するとなると不思議と「戻りたくない」衝動に駆られる。これが旅の中毒性なのだろうか。NYを出てからの旅路を思い返しながら過ごしていると、バンクーバー到着まではそう退屈ではなかった。むしろ時間が足りない位だった。滑走路の一番端に着陸した飛行機から直に滑走路に降りて迎えに来たバスへ乗り込む。ホワイトホースの気温と比べると真冬と春先程の温度差があるが、全員がホワイトホースから帰ってきただけあって服装は相当な防寒だ。ターミナルに入ってジャケットをまるめ、ベルトコンベアーから流れてきたバックパックに押し込む。


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二度目のバンクーバーなので本日の滞在先は前回同様ギャスタウンのキャンビーホステルにする。空港から電車でウォーターフロント駅まで向かい、そこから徒歩で宿を目指す。なかなかどうして1度来ただけなのに迷わずにホテルへ辿りつくことができた。受付のピアスだらけの姉ちゃんに「覚えてる?」と尋ねてみると「もちろんよ!」との返事が返ってくるが、きっと覚えていないだろう。決まり文句の「1番安い部屋で」と伝えると、前回泊まった部屋と同じ場所へ案内された。さて、宿は確保したが何もすることがない。時刻は午後2時を回ったところだが外の天気はあまり宜しいとは言えない。地球の歩き方でバンクーバーの観光を調べてみるが、オリンピックの遺産を見て回るのが関の山だ。あまり興味はなかったが宿の部屋で帰国までの時間をゴロゴロと過ごすのは勿体ないので重い腰をあげて外へ出る事にした。


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世界一薄いビルというものと、バンクーバーオリンピックの聖火台を眺める。特になんの事はない。オーロラを見た後に見るべきものじゃないなと少々後悔しつつ、俺はバンクーバーの街中をあてもなく歩き回った。疲れたらベンチに腰掛け、小腹がすいたら露店でホットドッグを買い、喉が乾いたらコーヒーを飲んだ。つまらなかった。オーロラが強烈過ぎて何を見てもかすんでしまう。どこか移動してみようか考えてみたが残り日数も少ないのでまた10時間程のバスの移動は無理だ。バンクーバー近郊には自然豊かなアトラクションや観光名所もあるようだが、真冬に1人で行くものでもないだろう。


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結局この日、適当に見つけたショッピングモールの中を散策して時間をつぶし、夜になってから宿に戻る事にした。部屋に戻り荷物を置いて1Fにあるパブへ顔を出す。お決まりのカナダドライと適当なつまみを注文し、聞き取れなく意味も分からないTVのニュースを眺める。

そして数日後出国の日。


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いつも曇ったり雨ばかりのバンクーバーがこの日は晴れ渡っていた。ギャスタウンの蒸気時計に別れを告げ、空港へ向かう。飛行機が飛び立ち北米大陸が遠ざかっていく。


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日本へ帰国した俺は成田空港の書店へ真っ先に向かった。今回の旅の中でどうしても行きたくなった国が増えたのだ。その国の地球の歩き方を購入し、家へと戻った。
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Mちゃんを後部座席に乗せて丘を下る。カメラのバッテリーは2つ持っているが1つは使い切ってしまったので残りは一つだ。ここから湖畔のポイントまでは車で30分といったところなので充電する時間はないと思って間違いはない。多めに持ってきていたホッカイロをカメラ下部のバッテリーカバーへ二重に張り付け、俺は車を飛ばした。丘を下り大きな通りを横切り側道へ入る。街の光は遠ざかり路面を照らす光は車のヘッドライトだけとなった。ミラーで走ってきた丘の方を見ると先程まで見えていたオーロラは山の陰になってしまい見えなくなっていた。

俺「ねぇ、Mちゃん?オーロラ山に隠れてるけど大丈夫なのこれ!?」

M「う~ん、一応ひらけてるポイントだから見れるとは思うんだけど」

俺「おし!信じるよ!」

Mちゃんの指示で車は側道から更に側道に入る。路面はアスファルトから舗装のされていない道に変わった。丘を出発して30分、車は土手へと到着した。

M「ここ!ここ曲がって」

俺「ここ?!これ川じゃないの?」

M「ううん、ここ湖なの。ずーっと奥まである大きな湖だから、この湖畔がポイントだよ」

俺「車で入れる?」

M「一番奥までは無理かもだけど、途中の広くなってる場所までなら行ったことあるよ」

俺「OK!じゃあ、とりあえずそこまで行ってみようか!」

土手を駆け上がりそして下ると目の前には巨大な湖が広がっていた。車はそのまま5分程走る。圧雪なのでタイヤがスタックしてしまわないように慎重に進むと開けた場所が現れた。

M「ここ!!」

俺「おっけ~!どれ、降りてみよっか」

車のエンジンを止め外へ出ると、完全な暗闇がそこには広がっていた。何の音もしないが空を見あると無数の星がそこには広がっており、実に吸い込まれてしまいそうな星空だった。流れ星の音が聞こえてきそうな空を眺めているとMちゃんが口を開いた。

M「あ!オーロラ!」

俺「!!!!」

星空に気を取られていてスッカリ忘れていた。

俺「どこどこ!?あ!!!」


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そこには今まで見た事のないオーロラが空に輝いていた。

俺「なんか小さいけどカーテンみたいになってる!」

M「うんうん!」

俺「結構近くない?なんか思ったより全然ショボいけど、遥か遠くの山の向うにあったやつじゃなくて、こうして目の前に出てくれたの見れて良かったよ」

M「あ!!あ!!!」

俺「おおお!」

それは一瞬の出来事だった。


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M「近付いてきてる!どうしよう!?どうしよう!?」

俺「おおお!」

M「ほら!!ほら!!!ウネウネしてる!もっとこっちにくるよ!!!」

俺「うおおおおおおお!!!!」

M「あ!!!ほら~!!ほらほら!!目でカーテン見えるよ!!!凄い!!!」

俺「カメラ!!!カメラ出さないと!」


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それからは至福の時間だった。俺のカメラ技術がなくて上手に撮影できなかったが、オーロラはやがて俺達の頭上へやってきて真上から降り注ぐ形となった。光のカーテンが見上げると頭上でうねっている。気温は既に氷点下二桁台に突入しているというのにテンションが上がり過ぎて寒さを感じない。それからオーロラが消えるまでの間、俺は空を見上げ続けた。まるで生きているようだったオーロラは次第に薄くなっていき、本当にいつの間にか消えていなくなった。そして空にはまた無数の星だけが光るようになっていた。

俺「Mちゃん~!!!」

M「うん!」

俺「ありがとおおお!!凄かったよー!!」

M「ね!!凄いよね!!!私もここに来て1番凄いオーロラだったよ!」

俺「うおおおおおお!!!オーロラ見たぞおおお!!!」

M「これね、多分ブレイクって言うんだよ」

俺「ブレイク?」

M「そう。オーロラにもレベルがあって、1~5まであるんだけど凄いオーロラをブレイクっていうの」

俺「へぇ~!じゃあ凄いの見れたってことだよね!?」

M「うん!勿論!あれ以上ってなかなか見れないよ!」

俺「やったああああああああ!!」

M「はぁ~、最初はちょっと面倒だったけど来て良かった~」

俺「ほんと有難うね~!あ!Mちゃん明日仕事なんだよね?送るよ」

M「うん!ありがと~!私も友達に自慢しよ~!」

それから俺はMちゃんを送り、宿へ戻ってきた。静かにドアを開けベッドへ戻ったが興奮のあまりに眠る事ができなかった。すぐさまカメラで撮影したオーロラを見たかったが、急にカメラを室内に持ち込むと結露で壊れてしまうので車の中へ置いたままだ。やっとだ。やっとここまできた。NYを出発して無謀とも思える旅が無事完結した瞬間だった。今まで色んな場所へ旅をしたけど、いつも旅の終わりは心残りばかりだった。「○○に行くんだった」「あの時ああしてれば・・」だけど今日は違った。ただただ満足だった。

目が覚めるとすっかり陽は昇っていた。あれだけ眠れなかったのに気がつくといつの間にか眠っていたようだ。今日はホワイトホースからバンクーバーまで戻らなくてはならない。飛行機の時間は夕方なのでそれまでに荷物をまとめて宿をチェックアウトし、レンタカーを返さなくてはならない。午後1時、俺は管理人にオーロラを無事にみることができたと伝え、宿をチェックアウトした。


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バックパックを助手席に放り投げ空港の目の前にあるレンタカー屋を目指す。ホワイトホース滞在の間ずっと一緒だった名前も分からないアメ車だが、いざ別れがくるとMさんと別れるより寂しかった。そういえばMさんは今頃何をしているのだろう。Mさんが帰国してからすぐオーロラを見れたと言ったら怒るのだろうか。フライトの3時間前に空港へ到着し、荷物を預ける。何もない空港なので何もすることがない。


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もう来ることはないだろう。誰もいないレストランで少し遅めの昼食を食べながら、凍てついた滑走路を眺め今回の旅を振り返る。遠かった。NYからただただ遠かった。だけどそのせいか達成感はあった。俺はこれからも旅を続けられるのだろうか。思い返せばタイからはじまった俺の一人旅。何も考えないで思うがまま行動した結果縦断することになった中東。あの頃から比べると少しは成長したのだろうか。

そんな事を考えつつ過ごし、俺は再びバンクーバーへ向かった。
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俺のホワイトホース滞在の時間も徐々に少なくなってきた。あと数日で俺はバンクーバーに戻らなくてはならなく、バンクーバーへ戻ったら僅か1日滞在しただけで翌日には日本へ戻らなくてはならない。Mさんが帰国してからも毎晩のようにオーロラを求めて探しまわったが結局見れるのは遠くにうっすら緑になっているだけのオーロラで、頭上で爆発するようなオーロラを見る事はできなかった。この日、いつものように昼間は眠りこけて夕方から起きだすという行動をとっていた俺はいつものようにカップラーメンにお湯を注ぎ、麺をすすりながら辺りが暗くなるのを宿のリビングで待っていた。宿に宿泊している欧米さんはどういうわけか夜になると外へ出ていく。見た感じ軽装なのでオーロラを見に行くといった感じではないので飲みに行っているかクラブにでも行っているのだろう。そんな彼等を横目にいつものように小さなデイパックに三脚とカメラ、お湯を入れた水筒、ホッカイロにフリースを詰め込みいつもの丘へ向かう準備をする。

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時計の針は午後10時を回り、宿泊客で宿に残っているのは俺1人。管理人も自室で眠りこけているだろうこの時間に俺は今までとは違う何かを感じていた。予感があったのかもしれない。何か胸騒ぎがする。もしかしたら今日は見れるのではなかろうか?


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ipadで今日のオーロラのデータを見る。これは太陽からの太陽風と地場を示したグラフであり、100%信用することはできないが、基本的に赤色のグラフが上にあればあるほど強い太陽風が吹いているものとされ、黄色のグラフが振れていれば磁場が南寄りになっていることを示す。いつもは完全に横ばいだった赤色のグラフがこの日はグラフを突き抜けんとするばかりに上に振れており、磁場を示す黄色のグラフも相当に振れている。これはもしかしたら凄いのが出るかもしれない。俺は日本酒をグイと飲み干すと急いで丘へと向かった。

何度上ったか分からない丘へ到着し、北の方角を眺めると雲もなく遠くの山まで見渡すことができた。だがしかしオーロラは見えない。あの予報は約1時間後の予報なので当たれば今から30分後にはオーロラを見る事ができる。ならば30分間耐えようじゃないか。俺は雪原に三脚を刺し固定し、雲台にカメラを取り付けてレリーズを取り付ける。カメラのピントを無限大に合わせ数枚テスト撮影をすると、なんとそこには緑色に光るオーロラが遠くにだが色濃く写っていた。俺のテンションは一気に上がった。しかしここで何枚も撮影してしまうとカメラのバッテリーがもたない。これまでの経験上この寒さの中では連続で30分も取れれば良い方だ。きっと現れるオーロラを撮影する前にカメラが死んでしまっては悔やんでも悔やみきれない。そんな事を考えていた時、後方から雪を踏みしめて道を歩く音がした。見るとカメラの三脚を持ち歩いている。きっとオーロラの撮影をしに来たのだろう。

俺「は~い」

?「は~い。オーロラ見える?」

俺「うん、でもまだ全然薄いかな」

?「あれ?もしかして日本人ですか?」

俺「え?うん。あれ?日本人?」

?「はい」

彼女の名前はMちゃん。奇しくも先日まで俺と一緒にいたMさんと同じであった。

俺「どう?オーロラいいの見れた?」

M「先月は結構凄いの見れましたよー!」

俺「先月?」

M「あー私こっちに住んでるんですよ。ワーキングホリデーってやつ」

俺「こんなとこにワーホリ!?凄いね~」

M「いや~どうしてもオーロラが見たくて」

俺「なんか今日は結構凄いの出そうな感じなんだけど、どう思う?」

M「あ~私もグラフ見て来たんだけど今の所予兆はないね」

俺「だよねぇ」

Mちゃんと話をしながらオーロラを待つ事1時間。結局空にオーロラは現れなかった。

俺「あーあ。今日も結局駄目か~」

M「そうみたいですね。でも諦めないで頑張って!」

俺「うん。あ、帰り送って行こうか?」

M「うん、大丈夫!有難う!」

俺「いやさ、俺車だし」

M「え?あそこの車?レンタカー借りてるんですか?」

俺「そうそう」

M「じゃあお言葉に甘えようかな~」

俺「OK!行こう」

M「宿はどこなんですか?ビーズニーズ?」

俺「おお!さすが知ってるね!そうそう!」

M「私もたまに遊びに行くんですよ~。この前も行ったけどぷらさん居なかったなぁ」

俺「あー俺基本昼間寝てたからなぁ」

M「そっか、それでか~」

俺「ねぇ、もし時間あったら宿寄っていかない?全然眠くないからさぁ」

M「うーん、暇だし行こうかな」

俺「いいね!」

その後俺たちは宿へ戻り、缶ビールを飲みながらMちゃんが撮影した写真などを見せてもらい時間をつぶした。

M「凄い時なんか街中でも見えるんですよ~」

俺「そんな凄いんだ。あ~見たいなぁ。グラフは凄かったのになんで見えないかなぁ」

M「そりゃ運もあるし天気次第だからね~」

俺「あ~あ、グラフは今どうなって・・・!!!!

M「どう?」

俺「なんか凄い事になってるけど!?」

M「どれどれ・・・・・!!!!

俺「これどうなの??」

M「いや相当条件はいいと思うよ!」

俺「もう1回行っちゃう?」

M「行ってみようか!車ならすぐだし!」

俺「うん!」

俺達は再び車へ乗り込み、丘へ向かった。時刻は午前1時を回っている。急いで車から降り三脚を設置してカメラを北へ向ける。少しでもオーロラが写るようにISO感度を1600まで上げて30秒間シャッターを開く。

M「どう!?」

俺「!!!」

M「写った?」

俺「すげー!感度上げ過ぎてメッチャ緑になってる!」

M「お~!出たね~!」

俺「ねぇ、撮って!俺入れて写真撮って!」


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俺「お~!今までで1番すげー!」

M「良かったね~!」

俺「これさ、もしかしたらもっと凄くなるかな?」

M「予報は電波ないと見れないから今どうなってるか分からないけど・・」

俺「うおおおお!!!オーロラアアアアア!!!」

M「うん!キレイキレイ!」

俺「あれ?Mちゃん撮らないの?」

M「あ・・・うん。私この程度のなら結構見たから」

俺「この程度って・・やっぱ凄いのはもっと凄いのかぁ」

M「うん。もうね、パァアアアって!」

俺「うわー見たい~。ねぇ、この後どうかな?見れるかな?」

M「どうだろうね~。見れるといいけど」

俺「あ、そうだ。そういえばさ、ここの丘って後ろに街の光あるじゃん?」

M「うん」

俺「だから、もっと真っ暗な場所ってないのかな?」

M「ある事はあるよ~」

俺「遠い?」

M「30分位かな?でもね、丘の上じゃなくて湖の畔なの。本当に何もなくて真っ暗だから結構危ないよ」

俺「OK!移動で!Mちゃんナビしてね!」

M「えっえっ!?今から!?」

俺「ささ、乗って乗って!」

M「えっ!?私明日仕事・・・」

俺「出発ー!」


次回最終回へ。
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退屈だった。ただただ退屈だった。数時間かけてやっとの思いで走った道を再び数時間かけて帰るこの空しさ。フェアバンクス、アラスカという極北の代名詞のような町を求めて出発した今朝は希望に溢れていた。フェアバンクスに行けばきっとオーロラが見える。そう思って疑わなかった。わずか1時間程でカナダの国境へ戻ってくると余りに短いアメリカ滞在だったからか怪しまれなかなか入国できなかった。こんな真冬に陸路で国境を越える旅行者は少ないのであろう。トランクの中からボンネットの中まで寒い中隅々まで調べられた挙句、やっとの思いで俺達はまたカナダへ入る事を許された。しかしここからが長かった。ホワイトホースに戻るまで軽く4~5時間はかかるだろう。グッタリしながらハンドルを握り、眠らないようお互い励ますようにくだらない話をしながら俺達はホワイトホースへと向かった。

M「なぁ?これからどうする?」

俺「どうするってホワイトホースに戻ってからですか?」

M「うん」

俺「とりあえず寝ましょうか。夜まではまだ時間ありそうですし」

M「そうだなぁ。あーでも腹減ったよな」

俺「ですね。考えてみるとほとんど食べてませんもんね」

M「じゃあ宿に戻る前にスーパーにでも行って食材と酒買って戻るか」

俺「自炊ですか?」

M「そうだな~。外で食う気力もないし、俺はもう最後の1日だから思いっきり満喫したいからさ」

俺「分かりました!そうしましょう」

M「あーそれとお願いがあるんだけどいい?」

俺「内容によりますけど」

M「うるせーよ聞けよ。え~っと、今晩1日オーロラ粘ったらその足で俺を空港まで乗せてってくれない?」

俺「飛行機何時なんですか?」

M「朝の8時位だったから6時に空港いれればいいからさ」

俺「それ位でしたらいいですよ!お任せください!」

M「よーし、そんじゃ今晩は粘るぞ!絶対に見るぞ!見るぞおおおおお!!」


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その後、俺とMさんは予定通り宿に戻る前にスーパーに立ち寄り、肉とソーセージとビールを買い込んで宿に戻った。久々に自炊した飯は旨かった。ただ肉を焼いてソーセージを茹でただけだが旨かった。2人で3人前はペロリとたいらげ、俺はベッドへ、Mさんは帰る為のパッキングをする為に別室へと向かった。それから俺は眠ってしまったらしく、Mさんに起こされた頃には窓の外は真っ暗になっていた。

俺「あ、おはようです。今何時ですか?」

M「今9時を回ったとこだよ。そろそろ行こうか」

俺「Mさん荷物の整理は終わったんですか?」

M「ああ終わったよ。カメラと三脚しまえば終わりだから車に入れといてよ」

俺「分かりました!俺も無茶言った手前最後は協力します!オーロラ見に行きましょう!」

M「よし行くぞ!」


Mさんのバックパックをトランクへ詰め込み夜空を見上げると雲一つない晴天だった。霧も出ていなく絶好のオーロラ鑑賞日和だ。


M「おいおい!なんか見れそうじゃない!?」

俺「はい!もしかしたら見れるかもですね!」

M「よし!行くぞ!」


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車を飛ばしてポイントへ向かう。初日に俺が偶然少しだけだがオーロラを見れた場所だ。北の方角にカメラを設置する。バッテリーが無くならないようにホッカイロをカメラに巻きつけ、更にその上からフリースでグルグル巻きにする。目には映らないがそこにオーロラはあると信じてシャッターを切る。Mさんのテンションは高い。

M「・・・・」

俺「どうです!?うつりましたか!?」

M「いや・・・」

俺「ええっ!?」

M「見てみ?」

Mさんが差し出したカメラの液晶部分には満天の星空が写っているだけであった。

俺「星しか映ってませんね」

M「うん」

俺「なんか元気ないですね」

M「はぁ・・・」

俺「ほら、まだ時間はあるし粘るんですよね?とりあえず車に戻りましょう」

M「いや、俺は外で待つよ。予備のバッテリーだけ車で充電しててくれない?」

俺「それはいいですけど風邪ひいちゃいますよ。氷点下20度位ありますよ」

M「いやそれでいいんだよ。せっかくここまで来たんだもん。この寒さも飽きるほど味わって悔いがのこらないようにして日本に戻りたいんだ」

俺「そうですか。じゃあ俺車に居るんで出たら教えてください!」

M「お前さぁ、ここはじゃあ俺も一緒にって流れだろ?」

俺「だって寒いんですもん」

M「あーいーよ分かったよ」


何時間待ったのだろう。俺の携帯はズーキーパーのやり過ぎでとっくにバッテリーは無くなっている。今まで撮影したアメリカからの旅路の写真も何回見返しただろう。Mさんが車へ戻ってきた。


俺「どうでしたか!?」

M「全然駄目」

俺「はぁ・・・」

M「今何時?」

俺「今午前2時を回ったところです」

M「あと4時間かぁ」

俺「Mさん、俺諦めも肝心だと思うんですよ」

M「無理!無理!ここまできて諦められっかよ」

俺「そうは言いましても・・」

M「だってどうするの?宿に戻って寝るのか?」

俺「眠くないですか?」

M「眠くなんかねーよ!頼むよ。マジで俺最後のチャンスなんだって」

俺「分かりました!今しばし待ちましょう!」


待った。Mさんは最善を尽くした。しかし結局オーロラが現れることはなく時間だけが過ぎていき、いつの間にか車で眠りこけていた俺はMさんによって起こされた。


M「帰ろうか」

俺「駄目・・・でしたか?」

M「ああ」

俺「じゃあ俺も最後に1枚だけ」


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俺「うーん、なんか若干緑に見えなくもないけど・・・」

M「これじゃオーロラ見れたって言わないだろ」

俺「ですよね」

M「よし、諦める。いい!これでいい!これでまたオーロラ見に来る口実が出来たって思えばいいんだ」

俺「ポジティブですね。よし!その時は俺また付き合いますよ」

M「いや、それはいいや」

俺「冷たいですね」

M「よーし、仕方ねぇ。帰るか日本に!空港まで頼むわ」

俺「分かりました。でもなんか寂しいですね」

M「そうか?まぁ会って数日だけどずっと一緒だったからな」

俺「俺、まだここに居るんでもし見れたら写真送りますよ。メアド教えてください!」

M「おう、有難うな」


こうして俺は空港へ車を走らせ、Mさんを見送ることとなった。ホワイトホース空港から小さな飛行機が停まっている。


俺「あの飛行機ですかね?」

M「そうだな。あーぷら君、世話になったね。メチャクチャだったけどまぁ楽しかったよ」

俺「俺も楽しかったです」

M「帰国したらメールくれよ。オーロラの写真楽しみにしてるからさ」

俺「分かりました!」

M「じゃあ俺行くわ!」

俺「Mさん!!」

M「ん?」

俺「あの、レンタカー代の250ドルください!」

M「・・・・。忘れてたよ」

俺「すいません言いづらくて・・・」

M「はいよ・・・」

俺「あざっす!じゃあMさんお元気で!」

M「お前もな!じゃあな!」


こうしてMさんを乗せた飛行機はバンクーバーへ向かって飛び立っていった。飛行機の電飾が夜空に消えていくのがキレイで、だけどそれより眠くて、俺はスタコラ宿へ帰ってその日の夕方まで爆睡したのであった。
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M「おい」

俺「はい」

M「ここどこなんだよ」

俺「アラスカです!」

M「アラスカのどこなんだって聞いてんだよ」

俺「スキャグウェイって町らしいですね・・・この先は・・・」

M「で?フェアバンクスは?」

俺「遥か彼方に・・・

M「聞こえない」

俺「遥か・・・彼方に・・・

M「なんでこうなったの?」

俺「とりあえずここに居ても仕方がないので町まで行ってみましょうか。行ってみればフェアバンクスに通じる道があるかもしれませんし、ここもアラスカなんだったらオーロラ出るかもしれませんし」

M「嫌な予感しかしねぇよ・・・まぁいい行くか」

それから俺達は国境を越えて一本道をただひた走った。山間部を越えたのか道は延々続く下り坂で雪も次第になくなりアスファルトが顔を出す。車の外気温計も10度前後を指している。

M「なんか雪無くなってねぇ?」

俺「走りやすくていいですね!」

M「いやそうじゃなくてさ。こんなんでオーロラなんか見れるの?」

俺「それは町の人に聞いてみましょうよ。ほら、町が見えてきましたよ」


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M「人どころか犬さえ居ないゴーストタウンじゃねぇかよ」

俺「そ・・・そんなはずは・・・」

M「マジ何ここ?誰か住んでるのか?」

俺「多分・・・あ!人だ!」

M「ちょっと聞いてきてよ」

俺「分かりました!おじさん、ちょっといいですか?」

おじさん「なんだい?」

俺「あの、ここからフェアバンクスって行けますか?」

お「フェアバンクス?ああ、この先の埠頭からフェリーが出てるよ」

俺「フェリー?」

お「ああ、ここは海だからね。フェアバンクスに行きたいんだったら海を越えるか内陸を遠回りするかしないと駄目なんだよ」

俺「Mさん、大変です!フェリーに乗る事になりそうです!」

M「なんねぇよ。乗ったらさすがに戻れねぇだろうが」

俺「ですよね!おじさん、あの、ここでオーロラって出ますか?」

お「でないよ」

俺「Mさん!オーロラでないそうです!」

M「薄々分かってたよ・・・」

俺「どうしよう・・おじさん・・・あの・・ここ何か観光するところありますか?」

お「この辺は夏になると人も多くてキレイなんだが冬は残念ながら人も居ないし店も開いてないし寂しい所だよ」

俺「Mさん!夏は混雑してるらしいです!夏は!」

M「今冬だろーが!」

俺「その通りですよね」

M「どうすんだよ」

俺「どうしましょう?戻りますか?戻ってフェアバンクス目指すか、ホワイトホースに帰るか・・・」

M「今更フェアバンクスって行ける距離なのかこれ?」

俺「おじさん、フェアバンクスって内陸回ったら遠いの?」

お「1000km以上あるだろうなぁ」

俺「Mさん、1000km以上いただきました!」

M「もう無理だろそれ・・帰るぞ。ホワイトホースに」

俺「マジですか!?何しに来たんですか俺等!?」

M「俺が聞きてーよ馬鹿野郎」

俺「あい・・・」


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スキャグウェイはゴールド・ラッシュの時代に誕生した町であり、今も1世紀前そのままの街並みで、ゴールドラッシュ時代にできた鉱山鉄道ホワイトパス・ユーコン鉄道がカナダのホワイトホースへと峻険な渓谷を走っているため、眺めがいいと人気があります。渓谷の河口にできた町は夏には海に客船が並び、背後では深緑の山々が氷河をいただいて美しい景観になります(wiki参照)

俺「ふむふむ、wikiにはこう書いてありますね」

M「俺の・・俺の・・オーロラ・・」

俺「あー皆と来てみたけど船一隻もありませんね・・・」

M「俺の・・・有給が・・・」

俺「おし、時間の無駄っぽいし戻りますか!」

M「なぁ・・・?」

俺「はい?」

M「俺は明日の朝8時の便で日本に帰ることになるんだよ」

俺「はぁ」

M「はぁじゃねぇ。いいか?俺は何しにここに来たか分かるか?」

俺「オーロラを見にですよね?」

M「そうだ。オーロラだ。だけどオーロラ見れたか?」

俺「見れてませんね・・」

M「そうだ。見れてない」

俺「はい」

M「だが絶対に見たい。今晩絶対にオーロラを見る」

俺「今晩って寝ないんですか?朝には飛行機でしょう!?」

M「ここで寝てたら本当にただの馬鹿だろ!いいか!?お前俺がここまで付き合ったんだから今晩1日中付き合え!粘るぞ!オーロラ絶対に見るんだ!いいな!」

俺「俺寝たいですよ・・・」

M「普通は遠慮して協力しそうなもんだがお前ハッキリ言う奴だな。友達少ないだろ?」

俺「よく分かりましたね」

M「見りゃ分かるよ。とりあえず寝るのは許さん。夜は外に出て粘るぞ」

俺「分かりましたよ。付き合いますよ」

M「よし!そうと決まればやる事は一つだ」

俺「戻るんですね?」

M「おう!ホワイトホースに戻るぞ」


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アメリカ合衆国に越境しアラスカ州を堪能する事1時間。俺達はあまりに早いカナダへの帰国に両国のイミグレーションで散々怪しまれ待たされた挙句、再び吹雪の中車を飛ばしてホワイトホースへ戻ることとなったのであった。